この記事では、非特異的腰痛に対する複数の腰痛体操のまとめている。
腰痛体操の一部に関しては、、リンク先でも詳細を解説しているので、興味が出た方は合わせて参考にしてみてほしい。
色んな腰痛体操
腰痛体操は年代順に以下の様に多くのものが発表されている。
・Williamsの腰痛体操(1937年)
・Kellyらの腰痛体操(1955年)
・Pheasantの腰痛体操(1962年)
・Kendall & Jenkins の腰痛体操(1968年)
・Caillietの腰痛体操(1968年)
・Mckenzieの腰痛体操(1979)
この中で、私が辛うじて(知識レベルとして)知っているのは、以下の3つになる。
・Williamsの腰痛体操
・Caillietの腰痛体操
・Mckenzieの腰痛体操
皆さんは、上記で知っている腰痛体操はあっただろうか?
※ちなみに上記の腰痛体操は「矢状面での運動(腰部の屈曲・伸展)を活用した腰痛体操」になるが、これ以外にも様々な腰痛体操が存在する点には注意してほしい。
Williamsの腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒Flexion exercise(postural exercises)
・具体的には、後述するリンク先を参照
Kellyらの腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒hanging
※hanginguは「つるすこと,つり下げ,垂下; 懸垂」といった意味であり、ドイツ徒手医学における『Overhang』と同じような肢位をとる。
※hangingのポイントは、腰部の力を抜いて脱力させることである。
※この姿勢において「腰部だけを脱力させる」というのは意外に難しく(ついつい多裂筋などのローカルマッスルが無意識下で働きやすいが、脱力しないと牽引効果は得られない。
これによって、腰椎へ牽引刺激をセルフエクササイズとして加えることで以下などを図る。
・椎間孔の拡大
・筋スパズムの軽減
・椎間関節の離開っというかディバーゲンス
教科書的には「急性痛に対して筋攣縮(musclee spasm)の軽減を目的としている」とされるが、物理療法としての『腰痛牽引』と異なり『腰部屈曲位での牽引』となるので、人によっては(闇雲に当てはめて実施することで)腰痛悪化が起こる可能性には注意したほうが良い。
※そもそも論として、急性痛を発症している人がこの姿位でリラックスすることができるかと言った問題もある。
※ちなみに急性腰痛における筋攣縮は二次的な機能障害であることも多いが、慢性期における筋スパズムは、それ自体が疼痛の原因である可能性も高くなるので、慢性痛に対するhangingによっててリラクゼーションを図ることは、一定の価値があるかもしれない。
※セラピストは、オーバーハングの肢位においてPIRを加えることで腰部に対して等尺性収縮後弛緩を狙う事も出来る。
余談として、腰椎牽引のエビデンスは以下になる。
推奨グレードD エビデンスレベル1
急性から慢性の腰痛において,持続または間歇牽引,短期または長期の施行期間の違いによって、
症状改善度、特異的腰痛評価(ODI),復職に対する効果には全く差異がなく、
さらには牽引単独が他の治療と比較して効果的であるともいえず、
従来の理学療法に牽引を追加してもその効果に違いがないことが示されている。
一方で、徒手療法においても頸椎や腰椎へ牽引刺激を加えることもある。
そして、この牽引刺激は分節的に牽引刺激を加える手法が多い。
※徒手的な牽引の目的は、機械的効果が目的の場合もあるが、(グレードⅡの範囲で実施することによる)神経生理学的効果を狙っている場合もある。
徒手的牽引に関しては、動画付きで以下の記事で解説している。
牽引療法(腰椎牽引・頸椎牽引)って効果ある?徒手的な牽引法も紹介!
その他の関連記事は以下になる。
⇒『ゲートコントロール理論』
⇒『DNIC』
⇒『内因性オピオイド』
⇒『下降性疼痛抑制系』
hangingに話を戻すと、hangingは評価に基づいて限局した分節に実施する場合もあるが、(他分節を閉鎖できないので)厳密な分節的刺激にはなり得ない。
Pheasantの腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒posture building(flexion exercises)
以下がPheasantの腰痛体操となる。
※Williamsの腰痛体操に加え、Kellyの腰痛体操(hangingu)などが付け加えられている。
Kendall & Jenkins の腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒isometric flexion exercise
・文献を読んだが、いまいちピントとこなかったので割愛する。
Caillietの腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒Flexion exercises
以下がCaillietの腰痛体操となる。
※他の腰痛体操と似たり寄ったりだが、側屈運動を取り入れている点は他と異なっている。
Mckenzieの腰痛体操
・腰痛体操の種類⇒Extension(or Flexion) exercises
・具体的には、後述するリンク先を参照
腰痛体操の詳細を紹介
前述したように多くの腰痛体操が発表されてきたが、どれも似たり寄ったりであったりする。
そんな中で、『ウィリアムズの腰痛体操』と『マッケンジー体操』について以下の記事で深堀しているので、興味があれば観覧してみてほしい。
ウィリアムズの腰痛体操の目的/方法/適用/禁忌
マッケンジー体操のポイント/方法/エビデンス/禁忌
前述してきた体操における『筋力強化を目的とした運動』は「表層筋」に着目したものが主流であった。
しかし一方で、Hodgesらが体幹深層筋(インナーマッスル)である『多裂筋』『腹横筋』などが上下肢の運動に先行して体幹安定のために収縮すると報告したことにより、これらの筋が脊柱安定にとって重要な筋として注目されはじめ、『脊柱安定化エクササイズ』として様々なものが報告されるようになってきた。
以下の記事では、そんな脊柱安定化エクササイズについて解説している。
腰部安定化運動の概要を紹介
(腰痛に対する)脊柱安定化運動は様々なものが報告されており、画一的なものは存在しないが、以下のように段階的にトレーニングしていくのが一般的である。
・出来る限り表層を収縮させず深層の単独収縮からトレーニングする
・段階的にエクササイズの難易度を高め、表層・深層筋の協調した収縮・運動を獲得していく
今回のテーマである「腰痛体操」とは少し異なってくるが、段階的なトレーニング方法は以下の記事で紹介しているので、興味がある方は観覧してみてほしい。
インナーマッスル(コアマッスル)の段階的トレーニングを紹介
非特異的腰痛に対する腰痛体操フローチャート
上記リンク先に記載した『ウィリアムズの腰痛体操(Williams exercise)』や『マッケンジー体操(McKenzi exercise)』や『腰椎安定化運動』をフローチャートに当てはめたものが以下になる。
このフローチャートは、腰痛をザックリと大枠で捉えて考えるには役立つと思うので、漠然とイメージできるようになっておいて損は無いと思う。
ただし、分かりやすさが重視されている一方で、深く考えだすとツッコミどころが満載な点には注意してほしい。
「単なる腰痛体操」としてでなく「リハビリ(理学療法)」として考えた場合には使えないが、「腰痛治療の理解を深める取っ掛かり」として覚えておくには良い図だと思う。
腰部に対する屈曲刺激と伸展刺激
腰部に対する屈曲刺激と伸展刺激を用いた体操を『書籍:これだけは知っておきたい腰痛の病態とその理学療法アプローチ では以下の様にまとめている。
腰椎屈曲体操:
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎分離症・すべり症
- 腰椎椎間関節症
- 腰椎前彎による腰痛症
- 腰痛の拘縮による前屈制限
- 脊椎屈曲手術後の筋力増強など
腰椎伸展体操:
- 腰椎椎間板障害
- 腰椎前彎減少や背筋筋力の低下
- 腰椎伸展可動域制限あのある腰痛症
- 骨粗しょう症に伴う圧迫骨折の予防
- 脊椎手術後の筋力増強など
必ずしも臨床ではこの通りにはならず、「あくまで理屈」といった側面が強いが、これらを整理しておくとクライアントの反応を通して臨床推論しやすくなる。
ただし、(重複するが)これを疾患別アプローチとして当てはめるわけではなく、あくまで情報の整理と言う意味で捉えてほしい。
腰痛を『疾患』というカテゴリーに当てはめた記事として以下もあるので、こちらも合わせて観覧すると更に理解が深まると思う。
椎間板ヘルニアの対処法
急性腰痛(ぎっくり腰)の激痛対処法とは?!
仙腸関節の痛みを治療しよう
脊柱管狭窄症のリハビリ(理学療法)ポイントを解説!
リハビリ職種向け、原因向けフローチャート
最後に「体操」ではなく「原因別の徒手理学療法フローチャート」を紹介して終わりにする。
~画像引用『これだけは知っておきたい腰痛の病態とその理学療法アプローチ』より~
ここに記載されたアプローチ方法に関しては、以下のホームページも参考にしながら照らし合わせてみてほしい。