この記事では中殿筋(Gluteus medius muscle)・小殿筋(Gluteus minimus muscle)について、筋力トレーニング・ストレッチングなどのリハビリ(理学療法)も含めて記載していく。

 

中殿筋・小殿筋の基礎情報

 

中殿筋・小殿筋の基礎情報は以下となる。

 

筋名

起始

停止

作用

神経

中殿筋

腸骨の腸骨翼の外面で前殿筋線と後殿筋線の間

腸骨稜の外唇

殿筋膜

大腿骨の大転子の上面・前面・外側面

股関節の外転

股関節の内旋(前部の筋腹)

股関節の外旋(後部の筋腹)

股関節の屈曲(前部の筋腹)

股関節の伸展(後部の筋腹)

上殿神経

(L4~S1)

小殿筋

腸骨の腸骨翼の外面で前殿筋線と下殿筋線の間

大腿骨の大転子の前面

股関節の外転、内旋

上殿神経

(L4~S1)

 

  • 中殿筋の筋連結

    ⇒大殿筋(筋膜)・大腿筋膜張筋(筋膜)・小殿筋(腱)・梨状筋(腱)・外側広筋(筋膜)と連結

  • 小殿筋の筋連結

    ⇒中殿筋(腱)・梨状筋(腱)と連結

 

~中殿筋~

中殿筋

~小殿筋~

小殿筋

 

 ~中殿筋と小殿筋~

中殿筋と小殿筋

 

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中殿筋の特徴

 

中殿筋が弱化すると歩行立脚相での側方安定性が低下する。

 

そして、歩行時に支持脚で体重を支えることが出来ず、反対側に骨盤が沈下してしまう。

 

この様な「歩行時(あるいは片脚立位時)に、中殿筋の弱化によって起こる反対側への骨盤沈下」を『トレンデレンブルグ徴候』と呼ぶ。

 

以下のイラストがトレンデレンブルグ徴候となる(画像引用:運動療法のための 機能解剖学的触診技術 下肢・体幹第1版)

トレンデレンブルグ現象
左イラストは右足での片脚立位を示している。
右中殿筋の弱化によって骨盤を水平(あるいは骨盤左側がやや拳上した状態)に保てておらず、骨盤左側が下方へ沈下している。



また、歩行中にトレンデレンブルグ徴候を起こす代わりに、体幹を支持脚側へ傾けることにより側方への安定性を高めようとする『デュシャンヌ歩行』が現れる場合もある。

 

デュシャンヌ歩行は「荷重時の重心線を骨頭に近づけることで、少ない筋力でも骨盤を支持できる」という特性を利用した歩行となる。

 

例えば、上記イラストであれば「体幹を右傾斜させることで右股関節に重心線を近づける」という戦略がデュシャンヌ歩行である。

 

トレンデレンブルグ徴候・デゥシャンヌ歩行のいずれも中殿筋の弱化で起こり、前者は「対側骨盤の沈下」、後者は「(対側へ骨盤が沈下しない+)同側への体幹のシフト」が確認できる点が違いと言える。

 

ちなみに、「トレンデレンブルグ徴候の原因は中殿筋ではない」と言っている人もいるが、トレンデレンブルグ徴候は中殿筋の機能不全によって生じる跛行を指す。

 

トレンデレンブルグ現象(Trendelenburg phenomenon)とは

 

中殿・小殿筋の機能不全を示す兆候の一つで、患肢で片脚起立すると反対側の骨盤が下降し、上体患側に傾く現象を言う。

 

本現象は中・小殿筋の起始・停止間の接近による、殿筋不全(先天性股関節脱臼、内反股など)や殿筋麻痺によって起こる。

~南山堂医学大辞典より~

 

ただし、「トレンデレンブルグ徴候のような跛行」が中殿筋機能不全以外でも起こる事は当然あり得る。

 

以下の記事には、その例として脚長差や疼痛についても解説しているので、(一部ではあるが)破行に興味がある方はチェックしてみてほしい。

 

決定版!跛行(異常歩行)の全種類を網羅する?

 

ここから先は中殿筋(+小殿筋)のリハビリとして、筋力トレーニングとストレッチングを記載していく。

 

 

中殿筋(+小殿筋)の筋力トレーニング

 

筋力トレーニングを以下の順で記載していく。

 

  • OKCでの筋力トレーニング
    ・背臥位
    ・側臥位

 

  • CKCでの筋力トレーニング
    ・片脚立位
    ・歩行

 

※CKC・OKCに関しては『OKC・CKCの特徴(+違い)』を参照

 

 

背臥位での中殿筋トレーニング(OKC)

 

筋力トレーニングとして一番簡単な方法は、『背臥位での股関節外転運動』である。
※要は、仰向けになった状態で、足を外へ開く運動となる。

 

この運動の代償としては以下がある。

 

 

大殿筋による代償:

大殿筋は股関節の外転筋であると同時に、伸展・外旋筋でもある。

 

そして、「股関節の外転」に外旋が伴っている(つまり爪先が外を向いたまま外転している)のであれば、大臀筋による代償が起こっている可能性もある。

 

代用を防ぎたいのであれば、股関節内外旋中間位で脚を開いてもらう(つま先が外へ向かないようにする)。

 

 

大腿筋膜張筋による代償:

 

大腿筋膜張筋は股関節の外転筋であると同時に、屈曲・内旋筋でもある。

 

なので「踵を床から浮かせながら(股関節を屈曲しながら)の外転」になっている場合、大腿筋膜張筋の代償を伴っている可能性がある。

 

※あるいは、「股関節を外旋位(つま先を外へ向けた状態)で踵を浮かせながら外転させること」で大腿直筋の代償も起こっている可能性がある。

 

そして、この様な代償を防ぎたいのであれば、踵を浮かさないようにすることである。

 

高齢者の場合は、極端な表現として「踵をベッドに押し付けながら脚を開いて」と強調したほうが良いこともある(大殿筋も働くことになるので、この辺はケースバイケース)。

 

ただし、そうなるとベッドの摩擦力が強い抵抗になってしまうので、踵の下にタオルを敷いたり、セラピストの手を踵の下に置くなどして、摩擦力に考慮すると良い。

 

これらの代償に配慮したトレーニングを「誇張した表現」にすると、以下のようになる。

 

『仰向けで、つま先を天井に向けた状態を維持しながら、踵をベッドから浮かさないように(むしろ軽くベッドに踵を押し付けつつ)足を外へ開いてください』

 

 

また、ここまで記載してきた代償運動の他に「「骨盤の挙上(腰方形筋)も起こる可能性がある。

 

※例えば、右股関節の外転運動の際に、右骨盤の挙上を伴う。

 

どうしても、骨盤による代償が起こるのであれば「一側下肢の外転運動」ではなく「両下肢を同時に外転させる」という手法を採用するのもアリ。

 

※これにより一側の骨盤が拳上するという事は無くなる(明らかな筋力の左右差があれば話は変わってくる)。

 

そこから負荷を高めようと思った場合、例えば、徒手抵抗を加えたり、セラバンドを大腿遠位(膝の少し近位)に巻くという方法もある。

関連記事⇒『セラバンド

 

注意点としては、両側の下肢を動かすことで腰椎の前彎が強くなる人がいる点である(腰部に加わるストレスが強くなる場合がある)。

 

 

側臥位での中殿筋トレーニング(OKC)

 

文字通り、側臥位(横向きに寝る)になってもらった状態での股関節外転運動(天井方向へ挙げてもらう)となる。

 

前述した背臥位でのトレーニングと異なり、重力の影響を受けるので下肢の重みが圧し掛かり、負荷が強くなると同時に、代償運動も起こりやすくなる。

 

特に、中殿筋後部線維が立位・歩行の安定性に重要であるため、股関節伸展外転方向に挙上させることを意識させることが重要である。

 

※そして、その様なトレーニングが可能なのも、側臥位でのトレーニングにおけるメリットとなる。

 

具体的な方法は以下を参照。

股関節外転の筋トレ2

側臥位

股関節15°屈曲位

※つまり、ほんの僅かに屈曲した状態

 

股関節外転の筋トレ1

股関節15°屈曲位から15°伸展位(つまり、ほんの僅かに屈曲した様態から、わずかに伸展した状態)へ、股関節を伸展しながら外転する。

このトレーニングのポイントは股関節の伸展に伴い、骨盤後方回旋(骨盤の後方への傾斜)が起こらないよう注意するという点にある。

 

つまり、(可能な限り)理学療法士の手で骨盤を固定するのではなく、患者自身に骨盤の固定を意識させ、後方へ骨盤が倒れないようにしてもらうことが重要である。

 

  • 骨盤後方回旋によって、見かけ上の股関節伸展(代償運動)が起こしていることが多い。

    高齢者であれば、やや骨盤+体幹を腹側へ傾斜させた状態で伸展・外転運動を実施したほうが、自身の代償をモニタリングしやすい(なので自主トレとして療法士の目が離れた場所でも、正しい収縮でのエクササイズが遂行しやすい)。

    骨盤後方回旋を制御しながらの股関節(軽度伸展運動を伴いながらの)外転運動は、CKCでありながらも、体幹筋との協調したエクササイズとして、SLR運動と同様に臨床での活用頻度が高い(使い方によっては、SLRよりコアトレーニングとしての利用価値がある)。

    関連記事

    ⇒『SLR運動のメリット・デメリット

    ⇒『段階的コアトレーニングを解説!

 

  • コアトレーニングの観点からも、「まずは代償の無い股関節外転位でキープした状態(等尺性収縮)」が可能となってから、イラストで記載してあるような股関節外転の求心性収縮(必要であれば遠心性収縮もOK)に進んでいく。

    これはPNFテクニックでいうところの「リプリケーション」と同じような考え。

 

 

ここまでの記載からも分かるように、側臥位で「一人で上手に股関節外転運動が実施できる状態になってもらうこと」は、「背臥位での股関節外転運動しか出来ない状態」に比べて、負荷量の観点、コアトレ―ングとしての観点、セルフエクササイズとしての効果を考えても、圧倒的に価値がある。

 

 

小殿筋の筋力トレーニング

 

余談として、小殿部の筋収縮を強調したトレーニングとしては以下の様な方法がある。

小殿筋の筋トレ

  • ボールを挟み込み、右側下腿はベッドと水平な状態からスタート
  • ボールを潰さないように外転位に保持しながら股関節の内旋運動
    (⇒膝はボールを潰さずに、ただし接触した状態のまま足部を天井側へ動かす)

 

これによって股関節軽度屈曲位にて「外転位をキープした状態での内旋運動」ということになり、中殿筋・小殿筋の前部線維の筋活動を促すことができる。

 

ちなみに、運動をしっかり理解できている人であればボールは必要ない。
股関節の内旋を、股関節の外転で代償してしまうのを防ぐためにボールを使用しているだけである。

 

なので、その様な人はボールを使用せず「股関節屈曲位にて最大外転をキープしたした状態」+「膝関節90°屈曲位」で、股関節内旋(足部を天井側へ動かす)でも良い。

 

 

膝関節を90°屈曲位にする理由としては以下がある。

  • 内旋の可動域がピンとくる
  • エンドレンジにおける努力(最後のひと踏ん張り)を意識しやすい
  • 下腿の重みが抵抗になる(抵抗運動になる)

 

とくに、このトレーニングのポイントはエンドレンジまでしっかりと内旋(下腿を持ち上げる)点にある。

 

これが強調できているほど「筋の短縮位での収縮」となり、収縮を実感できる。

 

※筋は適度な筋長を持っている方が収縮しやすく、短縮位であるほどに筋収縮が難しくなる。

 

※ボールを使用せず、「最大外転位で最大内旋するパターン」は更に短縮位となるため動員する筋群が限られた選択的収縮が可能となる(ただし、セルフエクササイズとして実施する場合は、本当に代償運動が起こっていないかモニタリングするだけの能力が必要)。

 

内旋作用を有する外転筋の機能が低下していると、外旋作用を有する外転筋群の負荷が増加し易くなってしまうため、中殿筋・小殿筋の前部線維の活動を促すために、外転位で内旋運動を行うことは重要となる。

 

ここに記載した例以外にも、PNFパターンの一つである、『下肢の屈曲・外転・内旋』では中殿筋・小殿筋の前部線維を強力に収縮出来る(筋が攣るくらい)。

関連記事⇒『四肢のPNFパターン

 

 

立位での中殿筋トレーニング(CKC)

 

片脚立位で保持するエクササイズは、バランス練習であると同時に「中殿筋に対するCKCトレーニング」でもある。

 

※例えば「右片脚立位を保持する」ということは、右中殿筋のトレーニングということ

 

※もちろん片足立位を保持するためには、非常に多くのバランス能力を有するが、ここでは「中殿筋にのみ」フォーカスを当てている点には注意していただきたい。

関連記事⇒『片脚立位保持テストの方法/平均値/基準値(カットオフ値)+運動への応用

 

片足立位保持を中殿筋にフォーカスして考えた場合、前述した「トレンデレンブルグ徴候」や「デュシャンヌ徴候」が現れているなら、難易度が高いという事になる。

 

※例えば、右片脚立位を保持しているとして、代償として骨盤右側の沈下(トレンデレンブルグ徴候)や体幹右傾斜(デュシャンヌ徴候)を起こすのは×。

片脚立位が代償無しで可能であれば、対側下肢の外転運動も加えてみる。

 

※例えば「右片脚立位を保持した状態で、左股関節の外転運動を繰り返す」ということ。

 

※片脚立位が静的トレーニングであったのに対して、「動的トレーニング」という事にもなる。

 

※筋力が弱い場合は、支持物を把持した状態で実施する。

関連記事⇒『静的バランス・動的バランス(+違い)

 

更に難易度の高い方法としては、対側下肢に重錘を巻いて外転する方法もある。

 

※左下肢に重錘を巻いて外転させると、右外転筋への負荷量が増える。

 

 

歩行による中殿筋トレーニング

 

そんな御大層な方法ではないのだが、「重たいものを同側の手に把持した状態での歩行」を実施する。

 

これも「中殿筋の動的なCKCでトレーニング」という事になる。

 

例えば、歩行中の「右立脚期にトレンデレンブルグ徴候がみられる場合」には、左側に骨盤沈下しなくなる程度の重錘を右手に持って歩行してもらう。

 

※(可能であれば)肩関節90°外転位で保持させ歩行させるのばベスト。

 

※要はヤジロベイのように釣り合いが取れて動揺が少なくなる。

 

※デュシャンヌ徴候が見られる場合でも理屈は同じ。

 

その後、立脚時での中殿筋の筋収縮を学習させながら徐々に重錘の重さを減らす(あるいは90°外転位で歩行したのであれば、上肢を下垂した状態で重錘を把持するなど)。

 

これは、実際に体験してみてほしい。おそらく重錘を持った方が、(釣り合いが取れて)楽に片脚立位を保持できると思われる。

 

難易度を高める方法としては、逆に対側で重錘を持った状態も破行が起きないよう歩いてもらうのも良い。

 

CKCでの股関節外転トレーニングの重要性に関しては以下の様に言われている。

 

OKCとCKCにおける股関節外転筋の筋力発揮の大きさ以外は、OKCにおいては、随意的に筋を収縮させて力を発揮させているのに対し、CKCでは無意識に(立脚期に股関節外転筋を働かせようとは意識せずに)筋を収縮させていることである。

 

このために、CKCの状態での筋力発揮トレーニングを十分行わないとOKCでの筋力がCKCで上手く働かない結果となる。

運動療法学より~

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中殿筋・小殿筋のマッサージ・ストレッチング

 

中殿筋・小殿筋は機能不全によって筋スパズム・トリガーポイントが起こりやすい部位でもある。

 

特に、「何らかの別の機能不全」を代償するために、庇いながら活動をおこなっているケースにおいて、筋スパズム・トリガーポイントを形成しやすい。

 

そんな筋スパズム・トリガーポイントへのアプローチに関して、以降の記事では中殿筋・小殿筋のマッサージ・ストレッチングを紹介する。

 

※セルフストレッチングが可能な運動能力を持っている人であれば、「立位でのセルフストレッチング」が強力で即自的効果も大きいので一番おすすめできる。

 

※中殿筋・小殿筋の機能不全が生じる原因は別にあることが多く、その場合は別のアプローチを実施しなければ根本的な解決にはならない。

 

※一方で、既に根本の問題は解決しているにもかかわらず、代償動作を行い続けている場合は、劇的な効果が起こる場合もある。

 

 

中殿筋・小殿筋の押圧マッサージ

 

ここから先は以下のマッサージについて記載していく。

・腹臥位にて、母指での押圧マッサージ

・側臥位にて、肘部での押圧マッサージ

・テニスボールを用いたセルフマッサージ

 

 

腹臥位で母指での押圧マッサージ

 

腹臥位置にて、母指で圧迫する方法は以下の様な感じ。

 

力で押すのではなく、体重移動で押す感じ。

 

ただし、分厚く短い筋群であり、硬くなっている場合は、療法士は自身の母指を痛めないよう注意が必要。

 

※個人的にはあまり、使わない方法。

中殿筋のマイオセラピー

 

 

側臥位で肘を用いた押圧マッサージ

 

側臥位にて療法士の肘を用いて実施する押圧マッサージもあり、具体的には以下の通り。

 

  • 肘頭に体重を乗せて圧迫した状態で、振幅を加える

 

  • ただし、そのままでは肘が中殿筋からすっぽ抜けてしまうため、反対手でCリングのカップを作って中殿筋の上に当て、そのCリングの中で膝頭を入れ込むとブレなくなる(すっぽ抜けなくなる)。

 

  • この状態で、体重を乗せて圧迫を加えた状態を維持しつつ、体重移動で振幅を加える。

 

肘を用いるので痛みも出ないし、体重移動で実施するので療法士の負担もほとんど無い。

 

 

テニスボールを用いたセルフマッサージ

 

また、テニスボールを用いてのセルフマッサージもあり、方法は以下の動画を参照。

 

わりと強力な刺激が入るので、トリガーポイントによって筋が過敏になっている際は注意が必要。

自分自身で治療できる点が最大のメリットとなる。

 

コロコロとボールを転がす際も、中殿筋自体はリラックスしておく必要があり、リラックスしていなければボールが筋肉で弾かれてしまい、十分な効果が得られない。

 

また、実際はもう少し腹側、つまりは大転子と腸骨稜の間付近に圧痛点が起こることもあり、そこにテニスボールが当たる手法も試みてみてほしい。

 

※ただし、この部位は上下の幅が狭いので、ボールをコロコロしながら圧迫を加えるといよりは、持続的な圧迫を加える手法になる。

 

※その場合はテニスボールが大きすぎる(純粋な側臥位でボールに中殿筋を押し付けるため、ボールが大きければ体幹の側屈が起こり苦しいことがある)可能性もあり、ソファーなど多少柔らかくて沈み込むような環境で実施するほうが安全かもしれない。

 

 

中殿筋(+小殿筋)のセルフストレッチング

 

療法士によるストレッチングは、理屈上可能ではあるが、代償を起こしやすく、それを予防するのは非常に手間であるため、「出来る人であれば」セルフストレッチングを実施してもらう方が手っ取り早い。

 

具体的なストレッチング方法としては、背臥位・椅子座位・立位での方法を紹介するが、一番効果的なのは「立位でのストレッチング」となる。

 

 

背臥位でのストレッチング

 

背臥位で実施する方法は以下の通り(右中殿筋のストレッチングを例に記載)。

 

①背臥位で足を組んだ状態で膝を立てる(右側が上に来るように)

 

②両下肢を左へ倒していく(つられて右股関節は内転する。)

※90°~100°屈曲位での内転になっているかモニタリング

※最終域で、更に股関節を内転する方向へ自身でオーバープレッシャーをかける。

 

③ストレッチングをする際に、可能な限り骨盤はつられて動かないよう注意する。

具体的には体幹は右回旋を強調する(しっかり捻じる)ことで、可能な限りベッドから右腰部が浮かないよう注意する。

 

 

 

椅子座位でのストレッチング

 

椅子座位でのストレッチングは以下の動画が分かりやすい。

 

 

ポイントは「股関節内転位で抱えた膝を、更に内側方向へ動かしていく」という点にある。

 

背もたれがあるので、後方へ体が倒れることを心配せずにリラックスしやすい。

 

※ちなみに、この状態(股関関内転・外旋・屈位)で骨盤前傾をキープしたまま体幹前屈していくと、梨状筋のストレッチングになる。

 

※梨状筋のストレッチングの場合は、椅子座位は窮屈なので、プラットホームやソファーなどの広々とした場所の方が実施しやすい。

関連記事⇒『梨状筋症候群に対するストレッチング

 

 

立位でのストレッチング

 

ここまで、臥位・座位でのストレッチングを紹介してきたが、一番おすすめなのは立位でのストレッチングであり、背臥位などでストレッチングが得られにくい(短縮が軽度な人)であっても強力なストレッチングが可能となる。

 

  • 足をクロス(ストレッチングする側の下肢が後方になるように足をクロス)した状態で、更に体幹を側屈させることで起始部である骨盤を引き離すように動かす。

 

  • もし右側の中殿筋をストレッチしたいのであれば、なるべく最大限に右股関節を内転し、そこから更に体重を落とし込むことで(重みによってジンワリと内転方向へ更にオーバープレッシャーをかけていく感じ)。

 

  • 骨盤を右へシフトしつつ、体幹は左方向へ(骨盤前傾をキープしつつ)側屈させた状態で、右股関節をポキッと折りたたんでいくような方向(床方向)に体重を落とし込んでいく。

 

  • そこから体幹の前屈や側屈・回旋の角度、股関節の内転や伸展角度などを微調整することで、中殿筋の前部・後部と様々な部位に伸長が加わり、もし中殿筋の短縮が認められるのであれば、「様々に微調整する過程において、中殿筋の伸張を実感できるポイントが見つかる。
  • この様な微調整を行いつつ、リラックスした状態でストレッチングをするためには、壁や支持物などを把持した状態で行うのが良い。支持物を利用することで、バランスは気にせず、微調整の検証やストレッチングが実施できる。

 

結構ゴチャゴチャと書いたが、微妙な違いによって大きくストレッチングの効果が違ってくるので、まぁ色々と試してみてほしい。

 

※中殿筋の位置は、もう一度「基本情報」に記載してある画像を参考にしてみてほしい。

念のため、中殿筋ストレッチングと類似している大腿筋膜張筋のストレッチング動画を以下に添付しておく。

 

※2分15秒から3分20秒までは立位でのストレッチングを実施している。

 

中殿筋のストレッチングと大きく異なる点は、「股関節を十分伸展位にしているか」である。

 

※中殿筋のストレッチングは、ストレッチ側の下肢を後方にした状態でクロスさせるが、大腿筋膜張筋のように股関節を伸展させるわけではない。

 

それらの点に注意した上で参考にしてもらいたい。

 

 

 

中殿筋のセルフストレッチングは本当におすすめ

 

重複するが、もう一度「立位でのセルフストレッチング」をお勧めして終わりにする。
ここで記載した「中殿筋のセルフストレッチング」は中殿筋の構造的・反射的短縮を起こしている場合に、大きな効果をもたらす。

 

例えば中殿筋は、「反対側の機能障害を有している場合に、それを庇うために過剰収縮し、疲弊し、鈍痛も出現してしまっている」というケースも多い(特に若くして反対側下肢に何らかの機能障害は執しているものの、それを庇いながら活発に活動できる人に多い)。

 

そんなケースには、前述したダイレクトストレッチもアリだが、この様なセルフストレッチングが可能なのであれば、物凄い効果を発揮することがある。

 

中殿筋は太く短い筋肉なので、自重を用いて強力なストレッチングを起こせるこの手法は、非常におすすめできる。

 

また、立位のまま可能なので「いつでも、どこでも実施できる」というメリットがある。

 

つまり「ちょっと中殿筋に鈍痛が出現してきた」であったりな際に、数回実施するだけで鈍痛が治まり「スッキリ」と出来る。

 

あるいは、ストレッチングは頻回に実施するほど効果的なので、症状が出ていなくとも「ちょっとした家事の合間」などにストレッチング出来るというメリットもある。

関連記事⇒『ストレッチングのポイントを解説!

 

もちろん、変形性(股・膝)関節症による可動域制限や疼痛、あるいは立位バランスの問題で立位でのストレッチングが難しかったなことも臨床ではあるだろう。

 

ただし、もし立位でのストレッチングが可能な身体機能を有しているのであれば『立位でのセルフストレッチングこそ最強だ』と感じる。

 

※皆さんも、実際に試して検証してみてほしい。

 

※でもって、このストレッチングが難しい場合は、他に記載した手法も是非活用してみてほしい。

 

 

中殿筋のリハビリ(理学療法)関連記事

 

中殿筋のセルフストレッチングはおススメだが、同じような手法として「大腿筋膜張筋のストレッチング」がある。

 

※どちらの方法であっても、短縮しているのであれば、どちらの筋も伸張される。

 

2つのストレッチングの違いは「股関節を十分伸展位にするかどうか」程度である(膝の屈伸や・回旋なども大腿筋膜張筋の作用を考えると考慮したほうが良いかもしれないが「股関節の伸展+内転+効果的な微調整」のほうが重要となってくる。

 

そんな大腿筋膜張筋に関しては以下を参照。

 

大腿筋膜張筋の特徴とストレッチング方法