この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)分野でなじみ深い「姿勢筋緊張」について、「筋緊張」も含めて記載していく。

 

目次

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姿勢筋緊張と筋緊張の違い

 

姿勢筋緊張に関して、筋緊張と対比しながら記載していく。

 

筋緊張とは、随意的にリラックスした状態での伸張に対する抵抗がどの程度かを示す用語として使われる。

 

一方で姿勢筋緊張(Postural muscle tone)とは、中枢神経系の調節が加わった状態での筋の状態を示す用語として使われる。

 

姿勢筋緊張における「中枢神経系の調節」とは、バランスや体重移動などの姿勢反応や随意運動の際の調節機構のことであり、重心が変化する環境に対応する能力ともいえる。

 

 

正常での姿勢筋緊張が可能にしていることは以下などである。

 

  • 抗重力姿勢の維持
  • 様々な支持面の変化への対応
  • 運動の獲得のための選択的な運動

 

つまり、姿勢筋緊張が正常でないと上記などが障害される可能性があるという事になる。

 

なので、動作の観察によって姿勢筋緊張を見ることで、中枢性の制御機構がどれぐらい働いているかということを推測することは重要となる。

 

また、姿勢筋緊張は中枢神経系の状態を反映するものであるから、覚醒レベル、知覚のされ方(認知)などからも影響を受けるし、実際に動作を行なう際のworkerとしての筋や関節の状態からも影響を受ける。

 

特に、知覚のされ方として強調されるのは、フィードフォワード(Feed forward)とフィードバック(Feed back)である。

 

※フィードバック・フィードフォーワードに関しては以下を参照

⇒『フィードバックとフィードフォーワード(+違い)

 

workerに関しては、例えば診察室でルーチンに診察を続ける必要のある医師などは(患者の方向へ頸部を回旋させた状態での問診⇔正中位でのディスクワークを繰り返すので、そのworker特有の姿勢筋緊張を生み出し、機能異常もきたし易い(例えば、肩こり・頭痛など)。

※でもって、ディスクの配置を変える(例えば、今までとは逆向きで問診ができる状態にするなど)で症状が改善したりもする。

 

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姿勢筋緊張に影響を与える要素一覧

 

姿勢筋緊張に影響を与えるものは、ここまで述べたもの以外にも多岐にわたり、例えば以下などが挙げられる。

 

  • 固有感覚コントロール
  • 覚醒注意力、自己覚醒
  • フィードバック
  • フィードフォワード、姿勢セット経験
  •  視覚
  • 聴覚
  • 感覚・知覚・認知
  • 糖神症状、記憶(学習増強・想起)、認知症
  • 温度(体温・室温)
  • 自律神経症状
  • 筋の粘弾性・ 短縮
  • バイオメカニクス
  • 成長
  • 体重
  • 加齢による変化
  • 性差
  • 既往歴

・・・・・などなど。

 

姿勢筋緊張を考える上での基本

 

姿勢筋緊張を考える上で押さえておきたいポイントは以下になる。

 

  • 姿勢筋緊張とは、抗重力位姿勢において、バランスや体重移動などによる姿勢反射によって随意運動の調整が加わった状態での筋緊張を表す。

 

  • 姿勢筋緊張は臥位・座位・立位というそれぞれの肢位により、あるいは「かまえ」の違いによっても異なる。もしかすると「臥位はリラックスした状態だから、姿勢筋緊張ではないのではないか」と考える人がいるかもしれない。確かに冒頭で「筋緊張=リラックスした状態における筋の緊張、姿勢筋緊張=中枢神経系の調整が加わった状態(つまりリラックスしていない状態)」と分かり易くしたが、厳密には臥位であっても重力の影響は受けており、同じ臥位でも人によって筋緊張は異なる。例えば膝窩部の筋緊張が高い人に対して、膝下へクッションを入れて膝を軽度屈曲位にしてあげるだけで筋緊張がゆるんだりするのは姿勢筋緊張が変化したからである。でもって、例えば脳卒中片麻痺などは身体図式が変化した異常筋緊張を有し得いるため、背臥位であっても姿勢筋緊張を評価すると様々な事が分かってくる。

 

  • 静的姿勢であっても空間で姿勢を安定させるために、姿勢筋緊張は絶え間なく変化している(例えば立位姿勢でも、一見静止しているように見えるかもしれないが、重心動揺計などで計測すると、僅かではあるが常に重心が移動している、つまりは姿勢筋緊張を変化させて立位姿勢をコントロールしているのが分かる)。

 

  • 姿勢筋緊張とは内・外環境から送られてくる情報に対し、反応していくための筋の準備状態であり、重力に対して身体を支える高さと、運動をつくり出せる(例えばリーチするという行為に対する準備として姿勢筋緊張を整える、あるいは「電車の揺れ」という外力が加わる準備として姿勢筋緊張を整えるなど)。

 

 

関連記事

 

姿勢筋緊張の検査としては、視診・触診も併用するが被動試験(他動運動に対する応答)を基本とする。

 

そんな『被動性検査』に関しては以下も参照(痙直・固縮などの用語に関しても動画とともに解説してある)。

 

筋緊張の評価(MASなどの筋緊張検査法)を紹介(+痙縮と固縮の違い)

 

 

また、脳卒中片麻痺に関する、評価も含めた総論は以下の記事でしているので合わせてチェックしてみてほしい。

 

筋緊張の評価(MASなどの筋緊張検査法)を紹介(+痙縮と固縮の違い)