この記事では、各関節における「しまりの肢位(close-packed position:CPP」と「安静肢位least-packed position:LPP」について解説していく。

 

「しまりの肢位」「安静肢位」とは

 

関節には大きく分けて以下の2つの肢位(位置)がある。

 

しまりの肢位(close-packed position:CPP):

・外力によっても動揺しない肢位

 

ゆるみの肢位(loose-packed position):

・外力により容易に動揺する肢位

・最も緩んでる肢位を「最大緩みの肢位least-packed position:LPP」と呼ぶ。

・「最大緩みの肢位」を「安静肢位」と呼ぶこともある。

※以降はLPPを「安静肢位」という表現に統一。

 

ではでは、各々について深堀り解説していく。

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「しまりの肢位(CPP)」の特徴

 

「しまりの肢位(CPP)」の特徴は以下の通り。

 

  • 関節面相互の接触面積が広く、適合性が高い。
  • 周囲の靭帯、関節包が緊張しているため外力を加えても動揺しない。
  • しまりの位置は通常、その関節の可動範囲の最終域付近であることが多い。

 

この位置では関節は機能的に安定しているため肢位を保つのに筋力を必要としない。

 

ただし、筋力を必要としない分、他の非収縮性組織にストレスが加わっている状態であり、過剰な外力が加わるとこれらの組織が損傷を起こしやすい位置でもある。

 

※これらのことから、CPPに近い位置で滑りのJoint play評価mobilization(例えば肩甲上腕関節の屈曲治療肢位における上腕骨頭尾側滑りなど)を用いる必要があるのであれば、過剰な力が加わらないよう注意する。

※CPPに近い位置では関節への圧迫力が加わりやすくなっているため、学派によっては治療肢位での滑りmobilizationを実施する際は軽微な離開を加えることで関節への負担を軽減させている。

※CPPでの位置でmobilizationは施行してはならない。

 

 

「安静の肢位(LPP)」と「ゆるみの肢位」の特徴

 

前述した「しまりの肢位」以外を「ゆるみの肢位」という。

 

「ゆるみの肢位」の特徴は以下の通り。

 

  • この位置では関節相互の接触面積は狭く、適合性は低い。
  • 周囲の靭帯・関節包がゆるむため外力によって容易に動揺する。

 

「ゆるみの肢位」では関節の適合性が低いため、肢位を保持するのに筋力が必要となる。

 

ゆるみの位置で最もゆるんだ位置を『最大ゆるみの位置least-packed position:LPP)=安静の肢位』とよぶ。

 

LPPでJoint play評価やmobilization(特に離開)を実施する:

 

Loose-packed positionで評価しようとしても、Joint playがアンバランスな状態(一方への可動は緩んでいるが、他方では少し緊張しているといった状態)なので、正しい状態で評価するうえでもleast-packed position(LPP)での評価を心がける。

 

しまりの肢位(CPP)と安静肢位の特徴まとめ

 

ここまで記載してきた特徴をまとめると以下になる。

 

しまりの肢位 ゆるみの肢位
関節面の適合性が高い(接触面積が大きい) 関節面の適合性が低い(接触面積が小さい)
関節包・靭帯は緊張する 関節包・靭帯は弛緩する
外力に対して安定 外力に対して不安定・動揺する
肢位を維持するのに筋力不要 肢位を維持するのに筋力必要
力仕事に適している 力仕事に不適である
長時間固定すると痛みが生じる 固定しても痛みが生じにくい

 

 

しまりの肢位(CPP)と安静肢位(LPP)の一覧

 

「しまりの肢位(CPP)」と「安静肢位(LPP)」の違いを簡潔にまとめると以下になる。

 

しまりの肢位(CPP)

 

関節 肢位
椎間関節 伸展位
顎関節 歯を噛みしめた位置
肩鎖関節 肩関節の挙上または水平内転にて肩甲骨と鎖骨の角度がもっとも狭い肢位、あるいは90°外転位
胸鎖関節 肩を最大限挙上し、鎖骨を完全回旋させた肢位
肩甲上腕関節 水平外転および外旋位
腕尺関節 伸展位
腕橈関節 肘90°屈曲・前腕軽度回内位(あるいは5°回外位)
上橈尺関節 5°回外位
下橈尺関節 5°回外位
橈骨手根関節 背屈・橈屈位
母指CM関節 完全対立位
母指MP関節
完全伸展位
2-5指MP関節 完全屈曲位
1-5指IP関節 完全伸展位
股関節 外転と伸展を伴う内旋位
脛骨大腿関節 完全伸展及び脛骨外旋位
距腿関節 最大背屈位
距骨下関節 内反位
横足根関節 横アーチを減少させる回外位
足根中足関節 回外位
中足趾節間関節 完全伸展位
趾節間関節 完全伸展位
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安静肢位(LPP)

 

 

関節 肢位
椎間関節 伸展と屈曲の中間位
顎関節 軽度開口位
肩鎖関節 基本的立位で上腕を体側に下げた肢位
胸鎖関節 基本的立位で上腕を体側に下げた肢位
肩甲上腕関節 55°外転・30°水平内転位
腕尺関節 70°屈曲・10°回外位
腕橈関節 完全伸展・完全回外位
上橈尺関節 70°屈曲・35°回外位
下橈尺関節 10°回外位
橈骨手根関節 中間位に近い尺屈位
母指CM関節 「外転・内転」と「屈曲・伸展」の中間位
母指MP関節 軽度屈曲位
2-5指MP関節 軽度屈曲位・尺屈位
1-5指IP関節 軽度屈曲位
股関節 30°屈曲・30°外転及び軽度外旋位
脛骨大腿関節 25°屈曲位
距腿関節 10°底屈・内外反の中間位
距骨下関節 各関節の中間位(底背屈中間位・内外反中間位)
横足根関節 各関節の中間位(回内外中間位)
足根中足関節 各関節の中間位(回内外中間位)
中足趾節間関節 中足趾節関節10°伸展位
趾節間関節 軽度屈曲位

 

 

関連記事

 

この記事は、姉妹サイト「筋骨格系理学療法の世界」で記載しいていた「安静肢位・最大しまりの肢位」を改編したものである。

 

「安静肢位・最大しまりの肢位」の細かい部分(○○度回内した肢位かなど)は学派によって異なっており、この記事では『日本理学療法士協会の徒手理学療法部門の資料』をベースにまとめている点には注意してほしい。

 

これらの概念は、例えば関節副運動の評価・関節モビライゼーション時に活用する知識でもある。

 

でもって関連記事を以下に記載しておくので、合わせて観覧してもらうと理解が深まると思う。

 

⇒『治療肢位・静止肢位(関節副運動の評価・モビライゼーションで必要な知識)

 

⇒『関節モビライゼーションの概要

 

⇒『関節副運動の評価(Joint play test)