この記事では「脳卒中に合併しやすい症状」としてイメージされやすい『肩手症候群』について記載していく。
ちなみに肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)に含まれる。
※肩手症候群はCRPS typeⅠに該当する。
CRPSに関して深堀した記事は、この記事の最後にリンクを貼っておくので、こちらも合わせて観覧すると理解が深まると思う。
肩手症候群とは
肩手症候群とは以下を指す
肩手症候群はRSDに含まれ、RSDはCRPS-typeⅠに該当する
肩手症候群は現在、「CRPSのtypeⅠ」に分類されており、経緯は以下の通り。
①肩手症候群は1947年にSteinbrockerによって提唱された。
↓
②原因疾患が特定されないまま反射性交感神経ジストロフィー(RSD)に含まれるようになる。
↓
③IASP(国際疼痛学会)が1994年に発表したCRPSの概念でRSDがCRPS(typeⅠ)にまとめられ、現在では肩手症候群はCRPS(typel)に属する。
肩手症候群は脳卒中片麻痺に合併しやすい
脳卒中片麻痺患者の肩の痛みは頻度の高い合併症であるり、その多くは肩関節周囲炎で、可動域制限を伴う。
ただし、麻痺側の手背部・前腕部の発赤、腫脹を伴う場合は『肩手症候群』の可能性も疑う。
※肩手症候群が「肩の痛み」や「肩関節の亜脱臼」を引き起こすこともある。
※肩手症候群は脳血管疾患発症後2~3カ月してから起こりやすいとされている。
肩手症候群と聞いて脳卒中を連想する人は多いのではないだろうか。
確かにその通りで、「肩手症候群は肩から手にかけて症状のあるCRPS」というだけでなく、脳卒中後には21%程度で発症すると記載されている文献もある。
ただし「肩手症候群=脳卒中片麻痺の合併症」ではない。
心筋梗塞後にも10~20%で心筋梗塞の数カ月後から左肩から上肢の連動制限で始まり、持続性の疼痛が加わって肩手症候群が発症するなどといったことが起こり得る。
あるいは、頸椎症や四肢の外傷でも肩手症候群が起こるとする(古い)文献も存在する。
まぁ今となっては、肩手症候群はCRPS typeⅠに分類しなおされているので、「脳卒中片麻痺に起こる合併症にCRPS typeⅠがあるが、これは肩手症候群と呼ばれることもあるよ」に思っておけばよい。
※頸椎症や四肢の外傷で起こるものもCRPSに現在はひっくるめることが出来る。
※ただ、あまり「肩手症候群」と「CRPS typeⅠ」とを関連付けしすぎると、この記事自体の存在意義にも疑問符が付きだすので、言及はこのあたりで辞めておく。
肩手症候群を病期別に整理
ここから先は、肩手症候群を病期別(1~3期)に記載してく。
第1期:
肩の疼痛、可動域制限とともに同側の手の疼痛、腫脹、血管運動性変化を呈する。
手指は屈曲が制限されることが多い。
第2期:
肩・手の自発痛と手の腫脹が減少するが、指の可動域制限は増強する。
適切な治療がなされない場合は第3期に至る。
第3期:
皮膚・筋の進行性萎縮、骨粗鬆症を認め、手関節・指関節が完全に拘縮する。
肩手症候群の治療
先ほどの「肩手症候群の病期別分類:第2期」で適切な治療がなされない場合は3期に至ると前述した。
でもって、適切な治療としては以下などが言われている。
・薬物療法
・リハビリ(理学療法・作業療法)
肩手症候群に対する薬物療法
早期治療が重要であり、抗炎症薬や鎮痛薬ステロイド薬などが用いられる。
薬物療法としては以下などが施行されることがある。
- 神経ブロック:
肩手症候群を含む「肩関節痛」を伴う例に対するブロック注射としては、肩甲上神経ブロックや肩峰下関節包注を可動域訓練に先行して行うことで、拘縮改善のための可動域訓練の効果を高めることができるとの意見もある。
※関節可動域訓練は慎重に!
また自律神経遮断を目的に星状神経節ブロックが行われる。
関連記事⇒『神経ブロック療法って何だ?解説します!』
- 非ステロイド性炎症薬:
非ステロイド系抗炎症薬はサイクロオキシゲナーゼ抑制を介してプロスタグランジン合成阻害にはたらき、末梢での炎症抑制に働く(中枢性にも脊髄レベルで疼痛抑制にはたらくとの意見も)。
- ステロイド:
ステロイドも細胞膜安定化による炎症改善を意図して用いられ、特に肩手症候群(CRPS typeⅠに該当)に用いられる。
関連記事⇒『ステロイド薬は諸刃の剣!』
- 向精神薬:
抗うつ薬はうつ症状がなくても有効で、セロトニンやノルアドレナリンの放出(下降性疼痛抑制系制系を賦活)にも関与する。
関連記事⇒『うつ病の薬も慢性疼痛に活用される!』
上記はあくまで一例である。
いずれにしても、効果と副作用のモニタリングを十分に行い、効果のない薬物をいたずらに長期間使用しないことが重要となる。
肩手症候群に対するリハビリ(理学療法・作業療法)
理学療法としては二次的障害の予防(拘縮・筋萎縮など)を目的に愛護的な関節可動域運動などが実施される。
ただし一方で、過度の関節可動域訓練などで肩手症候群が誘発されることもある。
従って、重複するが愛護的な関節可動域運動を心がけ、過用・誤用症候群として肩手症候群が起こらないよう注意する必要がある。
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肩手症候群は複合性疼痛症候群(CRPS typeⅠ)に含まれる
ちなみに肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)に含まれる。
※肩手症候群はCRPS typeⅠに該当する。
なので、以下の記事も合わせて観覧すると、肩手症候群への理解が深まると思う。