この記事では、脳卒中後疼痛(poststrokepain)として、視床痛にフォーカスした記事になる。

 

脳卒中後疼痛は視床痛以外にもWallenberg症候群(延髄外側と小脳下部の梗塞)が該当する。

 

一方で、脳卒中発症後に起こりやすい肩関節周囲炎や肩手症候群は含まない。

※肩手症候群に関しては『肩手症候群とは? | 脳卒中片麻痺シリーズ』を参照してみてほしい。

 

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目次

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視床とは

 

まずは脳の一部である『視床(thalamus)』について記載していく。

 

視床とは以下を指す。

 

第3脳室の側壁で卵円形の灰白質である神経核の複合体

※間脳の上部を占めている

 

視床は、表在感覚および深部感覚の第一次または第二次中枢である。

 

つまり、表在感覚も深部感覚も、この『視床という中継地点』を通って大脳皮質感覚中枢に刺激が伝達されるということになる。

 

でもって、視床が血管障害を起こすと、(中継地点が障害されるので)感覚障害を含めた様々な症状が出現し、これら症状を視床症候群と呼ぶ。

 

 

視床症候群の症状

 

視床症候群の症状は、障害側の反対側に起こる(視床の右側が障害されると、身体の左側に症状が起こる)。

 

でもって、視床症候群の症状としては以下などが挙げられる。

 

・運動麻痺(片麻痺)

・高度な深部感覚障害と持続性の痛覚障害

・痛覚過敏のヒペルパチー

・顔や頭部の焼けるけるような痛み

・軽い一側性の運動失調と高度の立体覚失認

・舞踏病様またはアテトーゼ様不随意連動

・同名半盲

・流暢性呼称障害性失語

・視床性認知症

・・・・・・・・・・・など。

 

また、視床と線条体との連絡の障害では、中手指節間関節が軽度屈曲され、指節関節の伸展(あるいは過伸展)がみられ、前腕は回内位に固定された姿勢となり、これを『視床手』と呼ぶ。

 

上記を見てもらえば分かるように、感覚障害が起こり、特に疼痛に関しては激痛をイメージできる用語が並ぶ。

 

でもって、ここからは視床症候群の中でも『視床痛』にフォーカスして記載していく。

 

 

視床痛とは

 

視床痛(thalamic pain)とは以下を指す。

 

視床、視床と大脳皮質間の感覚路が障害されて生じる感覚性過敏

 

でもって、温度や侵害性の刺激に対して異常な過敏性を伴うため、自発痛や灼熱感を伴う激しい疼痛が生じることがある。

 

※(前述したように視床後外側核には反対側の体性感覚が収束しているため)障害とは対側半身に症状が起こる。

 

 

視床痛の原因病巣は??

 

視床痛は

 

『視床、視床と大脳皮質間の感覚路が障害されて生じる痛みである』

 

と前述した。

 

でもって、もう少し具体的な原因病巣としては、『視床後外側の腹側尾側部』が注目されてきた。

 

しかし、脳卒中後の「麻側上下肢」や「顔面の痛み」は視床のみならず内包や視床皮質路(視床皮質間線維)といった視床よりも上部(suprathalamic paim)でも確認された。

 

※つまり、視床以外でも「視床痛に類似した痛み」が確認されたということ。

 

なので現在では、脳卒中の起こる部位が視床であってもなくても、「視床痛」「suprathalamic pain」「Wallenberg症候群」も含めて、『脳卒中後疼痛』と総称されている。

 

 

脳卒中発症後に生じた疼痛は全て『脳卒中後疼痛?』

 

『脳卒中後疼痛』という用語は、何となく「脳卒中発症後に生じた疼痛の総称」をイメージしてしまいやすいがそうではない。

 

前述したようなものが脳卒中後疼痛に該当する一方で、以下などが該当しない。

・肩関節周囲炎

・肩手症候群

 

脳卒中後疼痛かどうかの鑑別診断としては以下を出来る限り除外し、感覚の異常を伴う痛みであれば中枢性疼痛と診断する。

・侵害性疼痛

・末梢性の神経障害性疼痛

・精神病的原因による疼痛

 

※肩手症候群は異常感覚を伴うこともありそうだが、脳卒中発症から肩手症候群が発症するまでタイムラグがあり、二次的障害として捉えられている側面があるのかもしれない。

 

関連記事

⇒『肩手症候群とは? | 脳卒中片麻痺シリーズ

 

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中枢性疼痛(視床痛を含む)の概要と治療法

 

(視床痛を含めた)中枢神経系の損傷や機能障害によって生じる痛みを『中枢性疼痛(central pain)』と呼ぶ。

 

中枢性疼痛は、視床痛み以外にもWallenberg症候群(延髄外側と小脳下部の梗塞)などの脳卒中後疼痛が含まれる。

 

また、脳卒中後疼痛以外では以下などに付随した疼痛も、中枢性疼痛に該当する。

・・・・・・・・・・・・・など。

 

症状としては以下などが出現する。

アロディニアや痛覚過敏のほか

・異常痛症

・感覚過敏や異常感覚

 

 

 

中枢性疼痛(視床痛を含む)の治療

 

中性疼痛の治療は薬物療法が主体となり、例えば以下などが挙げられる。

 

 

 

※一方で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)オピオイドは効果が低いとされている。

 

 

また薬物療法に効果がなく、耐え難い痛みが持続するようであれば脊髄刺激・大脳皮質運動野刺激などが行われる場合もある。

 

あるいは、そのまま安静臥床傾向が続いてしまうと、本来の残存機能すら損なってしまう(廃用症候群が出現する)可能性があるため、認知行動療法が適応となることもある。

 

 

痛みを理解する上でのおすすめ書籍

 

『書籍:ペインリハビリテーション』は、この記事を作成するにあたって参考にした書籍であり、痛みを理解する上でも非常にオススメである。

 

 

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