この記事では、『股関節のMMT(下肢のMMT)』を記載している。
簡潔に記載しているので、MMT(徒手筋力テスト)を忘れてしまったリハビリ職種(理学療法士・作業療法士)、看護師、学生さんなどは、是非活用してみてほしい。
また、「MMTの基礎」や「股関節以外のMMT」に関しては記事最後のリンク先『MMT(徒手筋力検査)のやり方』でまとめているので、こちらも併せて観覧してもらうと知識が整理できると思う。
目次
股関節屈曲のMMT(徒手筋力テスト)
股関節屈曲の主動筋
股関節屈曲の主動作筋は『腸腰筋』であり、腸腰筋は以下の2つを指す。
・大腰筋(L2-4)
・腸骨筋(L2-3)
股関節屈曲MMTのテスト方法
段階5,4,3の股関節屈曲MMT:
患者体位:
・端坐位
・下腿は縁から垂らす
・両上肢 台の縁をつかみ上体を安定させる
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の側に立つ
・患者に大腿を内外旋中間位のまま台から持ち上げさせる
・抵抗は大腿遠位部に加える
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗し、大腿を台から持ち上げたまま維持できる(抑止テスト)
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗し、大腿を持ち上げ続ける
最終屈曲位から多少負けても可
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつその位置を保持できる場合
代償運動:
・股関節外転・外旋を伴った屈曲→縫工筋
・股関節外転・内旋を伴った屈曲→大腿筋膜張筋
・体幹の反り返りを伴う →大腿直筋
※以下は縫工筋(外転・外旋も伴う屈曲)による代償運動。
段階2の股関節屈曲MMT
患者体位:
・側臥位
・テストする側の下肢は上側
・下側の下肢は屈曲位をとり体幹を安定させる
MMTの方法:
・検者は患者の後方に立ち、一方の手で検査側の下肢の膝を下からささえる(股内外転・内外旋中間位を維持)
・他方の手で体幹のアライメントを正しく保つ
・患者に膝・股関節を同時に屈曲させる(下肢を支える手で運動を妨げない)
MMTの判定基準
段階2 :側臥位であれば運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の股関節屈曲MMT
患者体位:
仰臥位
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の側に立つ
・膝・股関節を屈曲位にした上で手で膝下でささえ上げる
MMTの判定基準:
段階1:
鼠径靱帯のすぐ遠位に大腰筋、その外側に腸腰筋の収縮を触れる
段階0:
収縮を触れることができない
股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋MMT
股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋の主動筋
・縫工筋(大腿神経)
股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋MMTの方法
段階5,4,3股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋MMT
患者体位:
・端坐位
・下腿は縁から垂らす
・両上肢を体側の坐面にそえる
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の外側に立つ
・片手を膝外側面にあてがい、他方で下腿遠位の内側全面を持つ
・抵抗は膝に当てた手で股関節伸展・内転方向に、
・足部をつかんだ手で股関節内旋・膝関節伸展方向に抵抗を与える
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗し、最終到達位置を維持できる(抑止テスト)
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗し、位置を保ち続ける
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつ最終到達位置を保持できる
部分的な運動にとどまる場合は、段階2のテストを実施の上で判断する
代償運動:
股関節外転・外旋がみられない屈曲→腸骨筋、大腰筋
段階2の股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋MMT
患者体位:
・仰臥位
・テストする下肢の踵を反対側の下肢の向こう脛の上に置く
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の側に立ち、必要に応じ下肢をささえる
・患者にテストする側の踵を反体側の脛の上を膝まで滑り上がらせる
MMTの判定基準:
段階2:
必要な運動を完全に実施できる
段階1,0の股関節屈曲-外転-(膝屈曲位での)外旋MMT
患者体位:
・仰臥位
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の側に立つ
・股関節屈曲・外転位、膝関節屈曲位にした上で手で膝下でささえる
MMTの判定基準:
段階1:
上前腸骨棘直下にて収縮を触れることができる
段階0:
収縮を触れることができない
股関節伸展のMMT(徒手筋力テスト)
股関節伸展の主動筋
・大殿筋(大殿神経)
・半腱様筋:脛骨神経(坐骨神経)
・半膜様筋:脛骨神経(坐骨神経)
・大腿二頭筋(長頭):脛骨神経(坐骨神経)
股関節伸展MMTの方法
段階5,4,3の股関節伸展MMT
患者体位:
・腹臥位
・膝関節伸展位
・両上肢で検査台の両縁をつかむ
MMTの方法:
・検者はテストする下肢の側に立つ
・片手を上後腸骨棘にあてがい、他方で下腿遠位の後側に抵抗を加える
・抵抗は大腿の遠位後面でも良い
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗して全ての可動域で運動でき、最終到達位置を維持できる
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗して全ての可動域で運動できる
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつ最終到達位置を保持できる
段階2の股関節伸展MMT
患者体位:
・テストする側の下肢を上に側臥位
・下側の下肢は屈曲位をとり体幹を安定させる
MMTの方法:
・検者は患者の後方に立ち、一方の手で検査側の下肢の膝を下からささえる
・他方の手で体幹のアライメントを正しく保つ
MMTの判定基準:
段階2:
側臥位であれば運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の股関節伸展MMT
患者体位:
腹臥位
MMTの方法:
検者はテストする下肢の側に立つ
MMTの判定基準:
段階1:
坐骨結節(膝屈筋群)、殿部中央深く(大殿筋)で収縮をみる
段階0:
収縮を触れることができない
番外テスト(股関節屈曲拘縮がある場合)
段階5,4,3の股関節外転MMT
患者体位:
・検査台上で胴以上を腹臥位とし、一方の脚で下半身をささえる
・両上肢で、検査台の両縁をつかむ
MMTの方法:
・検者は、テストする下肢の側に立つ
・片手で骨盤の安定を図りながら、他方で大腿の遠位後面に抵抗を加える
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗して全ての可動域で運動でき、最終到達位置を維持できる
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗して全ての可動域で運動できる
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつ最終到達位置を保持できる
・膝伸展位でテスト→股全伸筋群の筋力の総和
・膝屈曲位でテスト→大殿筋単独の筋力
段階2,1,0の股関節外転MMT
股関節屈曲拘縮がない場合のテストに準じる
股関節外転のMMT(徒手筋力テスト)
股関節外転の主動筋
・中殿筋(上殿神経)
・小殿筋(上殿神経)
股関節外転MMTの方法
段階5,4,3の股関節外転MMT
患者体位:
・テストする側の下肢を上に側臥位
・下側の下肢は屈曲位をとり体幹を安定させる
MMTの方法:
・検者は患者の後方に立つ
・一方の手を大転子の近位におき中殿筋を触診しながら体幹のアライメントを保持する
・抵抗は膝関節外側面に加える
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗して全ての可動域で運動でき、最終到達位置を維持できる
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗し全可動域で運動ができ、最終到達位を維持できる
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつ最終到達位置を保持できる
代償運動:
・体幹側屈による側方挙上
・股関節屈曲(さらに外旋も)を伴う外転→大腿筋張筋
段階2の股関節伸展MMT
患者体位:
・仰臥位
MMTの方法:
・検者は運動時に床面の摩擦がないよう足首を保持し下肢を持ち上げささえる
・股関節が過度に外旋しないよう保持する
MMTの判定基準:
段階2:
側臥位であれば運動範囲を完全に運動できる
段階1・0の股関節伸展MMT
患者体位:
・仰臥位
MMTの方法:
・検者は、足首を保持し下肢を持ち上げささえる
・股関節が過度に外旋しないよう保持する
MMTの判定基準:
段階1:
大転子のすぐ近位において中殿筋の収縮をみる
段階0:
収縮を触れることができない
股関節屈曲位からの外転MMT
股関節屈曲位からの外転の主動筋
・大腿筋膜張筋(上殿神経)
股関節屈曲位からの外転MMTの方法
段階5,4,3の股関節屈曲位からの外転MMT
患者体位:
・テストする側の下肢を上に側臥位
・上側の下肢は股屈曲45°、膝伸展位
・下側の下肢は屈曲位をとり体幹を安定させる
MMTの方法:
・検者は、患者の後方に立つ
・一方の手は腸骨稜の上におき体幹のアライメントを保持する
・抵抗は膝関節外側面に加える
MMTの判定基準:
段階5:
最大の抵抗に抗して全ての可動域で運動でき、最終到達位置を維持できる
段階4:
強力~中等度の抵抗に抗し全可動域で運動ができ、最終到達位を維持できる
段階3:
抵抗がなければ全ての可動域を運動でき、かつ最終到達位置を保持できる
段階2の股関節屈曲位からの外転MMT
患者体位:
・長坐位
・体幹は後方に45°まで傾けてもよい
MMTの方法:
・検者は、運動時に床面の摩擦がないよう足首を保持し下肢を持ち上げささえる
MMTの判定基準:
段階2:
・側臥位であれば運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の股関節屈曲位からの外転MMT
患者体位:
・長坐位
・体幹は後方に45°まで傾けてもよい
MMTの方法:
・検者は、一方の手で膝の外側で腸脛靱帯の付着部を、他方で大腿近位の前外側部に大腿筋膜張筋の収縮を触診する
MMTの判定基準:
段階1:
大腿筋膜張筋の収縮を触知する
段階0:
収縮を触れることができない
股関節内転のMMT(徒手筋力テスト)
股関節内転の主動筋
股関節内転の主動筋は『股関節内転筋群』であり、以下を指す。
・大内転筋(閉鎖神経)
・短内転筋(閉鎖神経)
・長内転筋(閉鎖神経)
・薄筋(閉鎖神経)
・恥骨筋(大腿神経)
股関節内転MMTの方法
段階5,4,3の内転MMT
患者体位:
・テストする側の下肢を下に側臥位
・上側の下肢は外転25°の位置で検者が保持
MMTの方法:
・検者は、患者の後方に立つ
・抵抗は膝関節の内側面に加える
MMTの判断基準:
段階5:
全ての可動域で運動でき、最大の抵抗に抗して最終到達位置を維持できる
段階4:
全可動域で運動ができ、強力~中等度の抵抗に抗し最終到達位を維持できる
段階3:
全ての可動域を運動でき、かつ抵抗がなければ最終到達位置を保持できる
代償運動:
股関節内旋・体幹仰臥位傾向→股関節屈筋
股関節外旋・体幹腹臥位傾向→膝関節屈筋
段階2の内転MMT
患者体位:
・仰臥位
・反対側の下肢はテストする下肢の運動を妨げないよう外転位とする
MMTの方法:
・検者は、テストする下肢の横に立つ
・運動時に床面の摩擦がないよう足首を保持し下肢を持ち上げささえる
・他方の手は大腿の近位内側で内転筋筋腹を触診する
MMTの判定基準:
段階2:
側臥位であれば運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の内転MMT
患者体位:
仰臥位
MMTの方法:
・検者は、足首を保持し下肢を持ち上げささえる
・他方の手で大腿の近位内側で内転筋筋腹を触診する
MMTの判定基準:
段階1:
内転筋の収縮が確認できる
段階0:
収縮を触れることができない
股関節外旋のMMT(徒手筋力テスト)
股関節外旋の主動筋
股関節外旋の主動筋は『大臀筋(下殿神経)」と以下の『外旋回六筋』である。
・外閉鎖筋(閉鎖神経)
・内閉鎖筋(L5-S2)
・大腿方形筋(L5-S1)
・梨状筋(S1-2)
・上双子筋(L5-S2)
・下双子筋(L5-S1)
股関節外旋MMTの方法
段階5,4,3の外旋MMT
患者体位:
・端坐位
・両上肢は体側で上半身を支える
MMTの方法:
・検者は、テストする下肢の側にかがむ
・一方の手を大腿遠位外側にあてがい基本軸を安定させる
・他方の手で抵抗を足関節外果から加える
MMTの判断基準:
段階5:
運動の最終到達位置を最大の抵抗に抗して維持できる(抑止テスト)
段階4:
運動の最終到達位置を強力~中等度の抵抗に抗して維持できる
段階3:
抵抗がなければ最終到達位置を保持できる
代償運動:
・反体側の殿部を浮かし、上体を傾かせる
・テストする側の膝を屈曲させる・股関節を外転させる
段階2の外旋MMT
患者体位:
・仰臥位
・テストする下肢は内旋させておく
MMTの方法:
段階2:
運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の外旋MMT
患者体位:
・仰臥位
・テストする下肢は内旋させておく
MMTの判定基準:
段階1:
大殿筋のみ触知可能で他は不可能であり、少しでも動きが認められる場合
段階0:
視覚的に動きは不確実、または全く動きが認められない
股関節内旋のMMT(徒手筋力テスト)
股関節内旋の主動筋
股関節内旋MMTの方法
段階5,4,3の内旋MMT
患者体位:
・端坐位
・両上肢で、体側で上半身を支える
MMTの方法:
・検者は、テストする下肢の内側にかがむ
・一方の手を大腿遠位内側にあてがい基本軸を安定させる
・他方の手で抵抗を足関節内果から加える
MMTの判定基準:
段階5:
運動の最終到達位置を最大の抵抗に抗して維持できる(抑止テスト)
段階4:
運動の最終到達位置を強力~中等度の抵抗に抗して維持できる
段階3:
抵抗がなければ最終到達位置を保持できる
代償運動:
テストする側の殿部を浮かす・上体を傾かせる
テストする側の膝を伸展させる・股関節を内転・伸展させる
段階2の内旋MMT
患者体位:
・仰臥位
・テストする下肢は外旋させておく
MMTの判定基準:
段階2:
運動範囲を完全に運動できる
段階1,0の内旋MMT
患者体位:
・仰臥位
・テストする下肢は外旋させておく
MMTの判断基準:
段階1:
中殿筋は大転子のすぐ近位、大腿筋膜張筋は股関節前外側面に触知できる
テストはいずれかの筋、または両方の筋を触知する場合
段階0:
全く収縮が認められない
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