今回はシェイプアップに効果的な運動とされており、尚且つ高齢者でも負荷を調整しながらの筋力増強が期待できるスロートレーニングについて記載していく。
※ここでは、若年者が実施可能なトレーニングを中心に記載しているが、高齢者にも応用可能な点は何となく理解してもらえると思う。
スロートレーニングとは
スロートレーニングは、略してスロトレを呼ばれることもあり、名前の通り「ゆっくりと行う運動」を指す。
従って、どんな運動であっても「ゆっくりと行えば」スロートレーニングになる。
例えばスクワットの場合、素早く実施するのではなく「5秒かけて下肢を曲げ、5秒かけて下肢を伸ばす」という風に、ゆっくり行えばスロートレーニングということになる。
スロートレーニングは、筋へ常に負荷が抜けるポイントが一切ないため、負荷が軽くとも(見た目以上に)ハードであったりする。
従って、(工夫次第では)筋肉量を増やす運動としても適している場合がある。
また、スロートレーニングをする際は、運動中に息を止めないように注意する必要がある。
スロートレーニングは1つの動作が5回程度で限度な強い運動であるため、スロートレーニングは「有酸素運動」ではなく「無酸素運動」に分類される。
※無酸素運動は身体へ加わるストレスが強いため、循環器系に問題があったり、高齢者であったりでは注意する必要がある。
※「スロートレーニング」と聞くと、太極拳などの「ゆっくりと、時間をかけて実施する有酸素運動」イメージしやすいが、厳密なスロートレーニングは無酸素運動に分類される。
スロートレーニングのポイント
スロートレーニングのポイントは以下の通り。
- ゆっくり動かす
- 関節をロックさせない
※運動中に筋肉を休ませないために、関節を伸ばしきらない、曲げきらない
- 呼吸を意識する
※ゆっくりと息を吐き、その吐きはじめから1秒後に運動を開始する
- 無理をしない
※5~10回繰り返せるくらいの負荷が適切
- フォームを重要視
※回数や強度より、安定した正確なフォームの方が重要
- 頻度の目安は1日10分程度、1週間に2~3回
※ただし、厳密な頻度は設定されておらず、筋肉痛が生じていないのであれば毎日実施しても構わない。
スロートレーニングの効果
スロートレーニングは筋力増強のみならず、様々な効果がもたらされることが分かっている。
例えば、アドレナリン・ノルアドレナリンといったホルモンの分泌を促進し、体脂肪を分解し、エネルギー源として消費されやすい形にしてくれる。
※この効果は1時間程度持続すると言われている。
あるいは、筋肉の発達を促し新陳代謝を高める成長ホルモンが増えるので、運動のあと数時間にわたり、体脂肪が燃焼しやすい状態を作り出してくれる。
※つまり、スロートレーニング後に普通の活動をするだけで、効率の良いダイエット効果が期待できる。
※成長ホルモンは子供から大人に成長する過程で盛んに分泌され、筋肉や骨の成長を助長するが、大人でも分泌され体脂肪の分解を促すことが分かっている。
筋肥大による新陳代謝が実感できるまでには数カ月は必要なはずにも関わらず、脂肪燃焼効果が実感できるのは、上記の「運動とホルモン」の因果関係も理由の一つとされている。
本来の無酸素運動・筋力増強トレーニングは、重い物を持ち上げたり押したりする強力な力が必要となる場合が多い。
一方で、スロートレーニングの場合は、筋肉の力を緩めず動かすことにより、軽い力でゆっくり動くにも関わらず、筋力増強が期待できる。
この理由は「軽い負荷をかけるだけなのに、重い負荷をかけたように筋肉を『だます』から」だと言われている。
例えば運動中に膝を曲げ切る、あるいは伸ばし切ること無く常に筋肉に力を入れ続けているので、その間は筋肉が持続的に収縮し、筋肉内の血流が制限され続けた状態になる。
この状態が重い負荷をかけて運動した時と似ているので、身体は「激しい運動をした時」と同じように反応し、筋肉を発達させることとなる。
スロートレーニングの実際
ニートゥーチェスト
クランチ
クロスレイズ①
クロスレイズ②
スクワット①
スクワット②
プッシュアップ①
プッシュアップ②
効率よくダイエットに活用する際のポイント
前述したが、スロートレーニングを実施すると、(一時的に)体脂肪を分解しやすい状態になる。
従って、トレーニングはできるだけしたいを活動させる前、つまり1日のスタートや外出する前、家事などの前に実施するのが良いかもしれない。
また、サイクリングや有酸素運動をスロートレーニングに組み合わせると、ダイエットは更に効率的となる。
組み合わせの順番としては、まずスロートレーニングを実施して成長ホルモンを分泌させて脂肪分解が進んだところで、有酸素運動に移った際に脂肪燃焼効果が大きくなる。
スロートレーニングのおまけ
スロートレーニングは無酸素運動に分類されると前述したが、無酸素運動にこだわる必要はなく、例えば太極拳のように「低負荷で長時間(数分間)を要す体操」であっても有酸素運動・無酸素運動の両方の恩恵が受けられる可能性がある。
以下の映像は、太極拳を学んでいる人からすると、非常に滑らかで素晴らしい上級者な動きに分類されるらしい。
ちなみに、OKCのスロートレーニングは高齢者にも使用しやすいと言われているが、太極拳のようなCKCトレーニングは高齢者(特に、健康ではなく、何らかの運動障害を有する高齢者)には不向きであると言われている。
関連記事⇒『CKCとOKC(+違い)』
太極拳は転倒予防に高い効果を発揮することが明らかにされており、高齢者の転倒予防の運動介入として多く用いられている。
ただし、課題の難易度が高いため運動障害を有する高齢者には適応となり難い。
~高齢者の機能障害に対する運動療法より~
太極拳は股関節戦略よりも足関節戦略を使用するため、足関節戦略が苦手な高齢者(特に運動障害を有している高齢者)には不向きとなる。
そんな『股関節戦略』『足関節戦略』に関しては、以下で詳しく記載しているので、興味がある方は観覧してみてほしい。
足関節戦略と股関節戦略(+違い・筋活動など)を徹底解説!
高齢者のリハビリ関連記事
ここから先は、高齢者のリハビリ関連記事を記載していく。
高齢者の筋力トレーニングを総まとめ!
高齢者の筋力トレーニングにおける効果/強度/回数/内容/注意点を紹介した記事となる。
ここで記載されている運動は、すべて「スロートレニング」としても実施できる内容なため、合わせて観覧してみてほしい。
高齢者のスクワットを解説!
高齢者の立ち座り動作と類似した運動であり、CKCトレーニングなため様々な筋を賦活できる『スクワット運動』について解説した記事となる。
高齢者に対するスクワットのポイントにも言及しているので、合わせて観覧して知識を整理してみてほしい。
スロートレーニングとの相性も良いためおススメな運動となる。
永久保存版!バランス運動(トレーニング)の総まとめ
高齢者の転倒予防を考えた場合、(太極拳と言った足関節戦略が有意なものも含めて)段階的なトレーニングを個別に考えたり、環境整備も考慮に入れた介入が重要となってくる。
そんな『高齢者の転倒予防を考えたバランスリハビリ(理学療法)』について以下で包括的に解説しているので、こちらも是非参考にしてみてほしい。