この記事では、『共同運動』と『連合反応』について記載していく。

 

また、記事の最後では共同運動・連合反応をイメージしやすい肢位として『ウェルニッケマン肢位』もイラスト一緒に紹介していく。

 

目次

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共同運動とは

 

一般的に言われる『共同運動』は「2つ以上から組み合される作用が、個々のときよりも大きくなる過程」を指し、「相乗作用」とも言われる。

 

一方で、1つの筋を動かそうとするとき、筋は集団(筋群)としてパターン化した運動が起こることがあり、これも『共同運動(synergy)』と呼ぶ。

 

でもってリハビリテーション医学においては、中枢神経性麻痺によって生じた陽性徴候の一つとして(後者の意味で)『共同運動』が用いられる。

 

共同運動に関しては、以下も引用しておく。

 

①単一の運動を他の運動と無関係に井独立して行うことができず、常に他と共同して、しかもある定まったパターンに従って、その一部としてしか行うことができない状態、すなわち運動を共同してしか行えない状態。

 

②正常な動作で各種の筋活動が協調してスムーズに行われてること(協調運動)が共同運動と呼ばれることがあるので、①は正しくは「原始的、病的あるいは異常共同運動」と呼ぶべきである。

 

リハビリテーション医学大辞典より引用~

 

※ただし、この記事では(原始的、あるいは異常共同運動とは呼ばず)、単なる「共同運動」として表現していく。

 

 

共同運動の具体的にはパーターンは以下の通り。

 

・屈筋共同連動パターン

・伸筋共同運動パターン

 

共同運動パターンは脳卒中の回復期によくみられ、特有の歩行パターンや上肢動作パターンを示すのは共同運動の影響を受けている場合が多々ある。

 

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共同運動パターンの具体例

 

 

共同運動は「脊髄における上下の連絡による伸筋系ニューロン同士、または屈筋系ニューロン同士の間で起こる運動」で、上位中枢からの抑制が弱まると現れる異常運動パターン(陽性徴候)である。

 

共同運動は1つの運動を行うとき、一定の決まった型(stereo-type)をとり、1つの筋のみを働かすことができず、一肢の筋群全体が働き、上肢あるいは下肢全体の運動となって出現する。

 

共同運動パターンの具体例としては以下が挙げられる。

 

~上肢の共同運動パターン~

 

項目 屈筋共同運動 伸筋共同運動
肩甲帯 挙上と後退 前方突出
肩関節 屈曲・外転・外旋 伸展・内転・内旋
肘関節 屈曲 伸展
前腕 回外 回内
手関節 掌屈 背屈
手指 屈曲 伸展

 

 

~下肢の共同運動パターン~

 

  屈曲共同運動 伸筋共同運動
股関節 屈曲・外転・外旋 伸展・内転・内旋
膝関節 屈曲 伸展
足関節 背屈・内反 底屈・内反
足指 伸展(背屈) 屈曲(底屈:clawing)

 

 

連合反応とは

 

体のある部分の運動に伴って他の部位が運動する反応が関節運動として現れる現象を『連合反応(associated reactions)』あるいは『連合運動(associated movement)』と呼ぶ。

 

健常者でも主動筋の作用に伴って重心の確保や姿勢の保持のために発現するが、脳卒中片麻痺患者では正常な連合運動は消失することがある(=異常な連合反応が出現することがある)。

 

連合運動は健常者でも主動筋の作用に伴って重心の確保や姿勢の保持のために発現する。

 

中枢神経疾患、とりわけ脳卒中患者ではフーバー徴候(Hoover sign)や体幹大腿連合屈曲運動などにみられるような正常連合運動が消失する。

 

理学療法学事典より引用

 

連合反応とは、(共同運動が脊髄の縦の連絡によって起こるのに対して)髄節間の左右の連絡によって起こる運動である。

 

でもって、片麻痺患者が患側肢にまったく随意性がみられないときに、健側肢の筋を強く働かすことにより、その影響が患側肢にオーバーフローして、患側肢の筋収縮を引き起こす現象である。

 

このオーバーフローは、脳卒中片麻痺急性期における弛緩性麻痺時にも連合反応(連合運動)を用いて患側肢に運動を誘発することが可能であり、リハビリとして活用することも出来る。

 

連合反応は上肢・下肢で以下の様に反応が異なる。

 

  • 上肢では左右ほぼ対称な運動(屈曲→屈曲・伸展→伸展)が一般的に出現する。
  • 下肢では内外転については対称性であるが、屈伸については相反性(屈曲→伸展・伸展→屈曲)に出現するのが一般的。

 

 

1.対側性連合反応

 

(1)上肢(対称性)

 ・健肢の屈曲⇒患肢の屈曲

 ・健肢の伸展⇒患肢の伸展

 

(2)下肢

 ⅰ)内転・内外旋については対象性(レイミステの反応

   ・健肢の外転⇒患肢の内転(と内旋)

   ・健肢の内転⇒患肢の外転(と外旋)

 ⅱ)屈伸に関しては相反性

   ・健肢の屈曲⇒患肢の伸展

   ・健肢の伸展⇒患肢の屈曲

 

2.同側性連合反応

 

主に1と同種(ただし、例外も少なくない)

 ・上肢の屈曲⇒下肢の屈曲

 ・下肢の伸展⇒上肢の伸展 など

 

 

 

レイミステ現象(Raimiste phenomenon)とは:

 

体側連合反応において、下肢の内外転・内外旋が対称性に反応する現象で、健肢の内転(内旋)により患肢の内転(内旋)が、健肢の外転(外旋)により患肢が外転(外旋)する。

理学療法学事典より~

 

 

ウェルニッケマン肢位

 

共同運動・連合反応はウェルニッケマン肢位をイメージすると理解しやすい。

 

脳卒中後の片麻痺では上肢で屈筋群・下肢で伸筋群に痙縮を呈し、いわゆる『ウェルニッケーマン肢位(Wernicke-Mann-posture)』をとることがある。

 

ウェルニッケマン肢位(ウェルニッケマン姿勢)とは、

脳血管障害などの内包および基底核、視床などの障害により障害半球の反対側に生じる特徴的な姿勢を指し、共同運動・連合反応の関与がイメージしやすい。

 

 

~上肢~

 

肩甲骨:内転

肩関節:軽度外転、内旋

肘関節:屈曲

前腕:回内

手関節:掌屈

指節間関節、屈曲

 

 

~下肢~

 

股関節:内転

膝関節:伸展

足関節と足部:底屈、内転、回外

指節間関節:屈曲

 

 

 

共同運動と共同運動障害の補足

 

この記事では正常人でも共同運動・連合反応は起こると記載してきた。

※なので病的な共同運動・連合反応は、共同運動異常・連合反応異常といった表現の方が厳密には正しい。

 

正常な動作で各種の筋活動が協調してスムーズに行われてること(協調運動)が共同運動と呼ばれることがあるので、「原始的、病的あるいは異常共同運動」と呼ぶべきである。

 

連合運動は健常者でも主動筋の作用に伴って重心の確保や姿勢の保持のために発現する。

 

でもって、脳卒中片麻痺では伸筋あるいは屈筋共同運動のような『一定の型以外の運動構成が不可能な病的共同運動』を引き起こすのだが、小脳性失調では『動作の解体(discomposition of movement)といった共同運動障害』を起こす。

 

「動作の解体」の例としては以下などが挙げられる。

 

  • 腕を組んだまま仰臥位から起き上がるように命じると、(頭部・体幹ではなく)下肢が高く上がってしまい起き上がれない。

 

  • 立位で上半身を後方に反り返らせると、膝の屈曲が生じずに、後ろに倒れてしまう。

 

例えば小脳失調の場合、共同運動障害(運動の解体)を呈し「体幹屈曲では前へバランスを崩す」「体幹伸展では後方にバランスを崩す」といった現象が起こることがある。

 

以下のイラスト上段は「正常(体幹屈伸の共同運動として下肢が協調して動くことで姿勢を制御するように働く)」、イラスト下段は「異常(運動の解体)」を示している。

 

 

関連記事⇒『運動失調(失調症)の評価法まとめ一覧

 

 

近位共同運動と遠位共同運動

 

ここから先は、余談として『近位共同運動』と『遠位共同運動』について記載していく。

※かなり専門的な用語なので、読み飛ばしてもらっても構わない。

 

近位筋共同運動(proximal muscle synergy)

 

近位筋共同運動の要素として以下が挙げられる。

・同肢の近位共同筋への興奮性結合

・同側の他肢(上肢から下肢、下肢から上肢)への興奮性結合(長脊髄反射)

・対側同肢への興奮性結合(交差性伸展-屈曲反射)

 

 

近位筋共同運動は以下の2つに分けられる。

・近位屈筋共同運動

・近位伸筋共同運動

 

近位屈筋共同運動(proximal flexor muscle synergy)

 

  • 下肢の場合:股関節もしくは膝関節の屈筋を伸張した際⇒その肢の屈筋対側下肢の膝・股関節屈筋、同側肩・肘関節の屈筋の反射的収縮を誘発する反射である。

 

  • 上肢の場合:肩関節もしくは肘関節の屈筋を伸張した際⇒その肢の屈筋、対側上肢の屈筋、同側下肢の近位筋の屈筋の収縮を誘発する。

 

 

近位伸筋共同運動(proximal extensor muscle synergy)

近位伸筋共同運動は、その上肢(下肢)の近位伸筋の伸張によって、その肢、対側上肢(下肢)、同側下肢(上肢)の近位伸筋が反射性の収縮を生じる。

 

 

遠位筋共同運動(distal muscle synergy)

 

前述した近位筋共同連動との主な違いは「遠位筋共同運動では刺激された肢に限局されている点」である。

 

でもって、遠位筋共同運動も「屈筋共同運動」と「伸筋共同運動」に分けられ、例えば下肢の場合は以下の反射も遠位共同運動に該当する。

 

  • 遠位屈筋共同運動⇒マリフォー反射(Marie-Fox reflex)
  • 遠位伸筋共同運動⇒伸筋突伸反射(extensor thrust reflex)

 

 

遠位屈筋共同運動

例えば上肢の遠位屈筋共同運動として以下が起こる。

手指と手関節の背屈筋(系統発生的には上肢の屈筋である)を伸張することで、肘の屈曲と肩の屈曲・肩甲の内転(retract)を生じる。

 

例えば下肢の遠位屈筋共同運動として以下が起こる。

足趾と足関節の背屈筋の伸張により、足趾・足関節の背屈、膝の屈曲、股の屈曲・外転・外旋が誘発される。

なので足趾足関節の促通手技としても利用されることもある(以下の動画25秒からの数秒間が、足指+足関節の背屈筋の伸張により、遠位屈筋共同運動を活用した促通手技になる)。

 

上記動画は『PNF(固有受容性神経筋促通法)』のPNFパターンであり、詳しくは以下も参照してみてほしい。

⇒『PNFパターって何だ?

⇒『PNFとは? PNFの臨床活用法まとめ

 

 

遠位伸筋共同運動

例えば下肢の遠位伸筋共同運動として以下が起こる。

足趾と足関節の底屈筋の伸張により、足趾と足関節の底屈、膝の伸展、股の伸展・内転・内旋が誘発(例えば陽性支持反応が誘発される)。

 

例えば上肢の遠位伸筋共同運動として以下が起こる

手指と手関節の掌屈筋(系統発生的には上肢の伸筋である)を伸張することで、肘の伸展と肩甲の外転(protract)を生じる。

 

 

共同連動反射は、ゆっくりと持続的である。

実際には、1つの反射が出現すると、他の拮抗する反射が誘発されるため、1つの反射がその最大反射肢位(maximal reflex posture)をとることはなく、複合されたものとなる。

 

 

関連記事

 

以下の記事は、脳卒中片麻痺に関連する用語や評価などをまとめた記事になる。

合わせて観覧してもらう事で、理解が深まると思う。

 

これだけは知っておきたい!片麻痺の評価テスト+陽性徴候まとめ