この記事では、腱鞘炎として有名な『ドゥケルバン病(DeQuervein disease)』と『ばね指』を解説していく。

 

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腱鞘って何だ?

 

腱鞘(けんしょう)』とは以下を指す。

 

腱を包んでいる鞘(さや)のこと

 

でもって腱鞘には滑液という油の様なものがあり、腱を滑りやすくしている。

 

腱は要所要所のポイントで、この腱鞘を通り抜け、抵抗なく効率よく滑走し、指の屈伸が行われる。

 

これは、あたかも「列車(腱)がトンネル内(腱鞘)をトラブルなく通過していく」のに似ている。

 

そして(狭窄症性)腱鞘炎とは、何らかの原因で腱鞘が炎症を起こし、健が腱鞘内をスムーズに通過できなくなった状態をいう。

すなわち、列車(腱)の通過が悪くなった状態を狭窄症性腱鞘炎と言う。

 

 

 

伸筋腱(指を伸ばす腱)の代表的な狭窄症性腱鞘炎には『ドゥケルバン腱鞘炎』がある。

屈筋腱(指を曲げる腱)の代表的な狭窄症性腱鞘炎には『バネ指』がある。

 

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ドゥケルバン病(DeQuervein  disease)

 

ここから先は手関節付近の腱鞘炎である『ドゥケルバン病DeQuervein disease』について解説していく。

 

 

ドゥケルバン病の病態

 

ドゥケルバン病は、手首における代表的な伸筋腱の腱鞘炎である。

 

親指側(橈側)の親指を伸ばした時に生じるカギタバコ三角(タバチュール)の親指側の短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通過する溝で、橈骨茎状突起部(手首の親指側)によって狭窄された状態から起こる腱鞘炎である。

 

①短母指伸筋腱 ②母指外転筋腱 ③腱鞘

 

 

かぎタバコ窩については、こちらも参照⇒『かぎタバコ窩って何だ?

 

 

ドゥケルバン病の原因

 

症状は手首の『痛み』と『腫れ』である。

痛みは物を摘まんだり、握ったりすると増強する。

 

もちろん上記症状があれれば必ずドゥケルバン病という訳ではない(他の病態も考えられる)。

 

でもって、ドゥケルバン病に対する特異的な疼痛誘発テストを『フィンケルシュタインテストFinkelstein test』と呼ぶ。

 

ファンケルシュタインテストは、現在ではEichhoff test(アイヒホッフ テスト)と呼ばれる。

 

 

ファンケルシュタインテストに関しては、動画付きな解説を以下でもしているので興味がある方はどうぞ。

⇒『フィンケルシュタインテストを解説(ドゥケルバン腱鞘炎)

 

 

ドゥケルバン病の治療(保存療法)

 

治療としては、痛みの要因となった作業や運動を控えることが第一となる。

 

実際は仕事などで、理想通りにいかないこともあるが、炎症を抑制し、痛みの感作が慢性化しないようにするには、一時的に安静にすることは大切になる。

 

また、短期間の非ステロイド系抗炎症剤が処方されることもある。

 

リハビリとしては以下などを実施・指導する。

 

 

  • ストレッチング(短母指伸筋・母指外転筋):

    短母指伸筋・母指外転筋のストレッチングは通過を良くするのが目的だが、ある程度痛み(炎症)が治まってから実施しなければ逆効果な場合もあるので注意する。伸張方法は方法はファンケルシュタインテストと同様。

 

 

また、難治例ではステロイド腱鞘注射が検討される場合がある。

関連記事⇒『神経ブロック療法って何だ?解説します!

 

 

ドゥケルバン病の治療(手術療法)

 

前述した保存療法(手術しない方法)を数ヶ月間行っても改善が見られない症例では、腱鞘切開術を勧めることがある。

 

※以下のイラストのように一部の「肥厚した腱鞘」を切開することで腱の滑りをよくする。

 

 

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ばね指

 

ばね指』は指の屈筋腱に起こる腱鞘炎で、靱帯性腱鞘が屈筋腱を圧迫したために生じる。

 

発症部位は母指が最も多く、3指・4指の順となる。

 

名称(バネ指)の由来は、引っかかった指を無理に伸ばそうとすると、まるでバネの現象のように、ビヨーンと伸びるのでバネ指と称され、別名「弾発指」、「スナッピングフィンガーsnapping finger)」とも呼ばれる。

 

以下のイラストの様に、指を伸ばそうとすると「ある角度」で引っかかり感(伸ばしにくさ)を感じるが、その角度を過ぎるとすんなり伸びる。

 

上記を、もっと分かり易いイラストにすると以下の様な感じになる。

 

 

ばね指(弾発指・スナッピングフィンガー)の原因・症状

 

ばね指(弾発指・スナッピングフィンガー)は中高年者に多く、慢性的な機械適刺激(使い過ぎ)が原因と思われるが、体質的な要因も大きく関与していると考えらている。

 

症状は指の付け根の痛みと運動障害である。

 

対象者の訴えとしては以下などが多い。

  • 指の曲げ伸ばしが困難だ
  • 朝起きると指が曲がったままで伸びない
  • 無理に指を伸ばそうとすると引っかかりを感じる

・・・など

 

 

~母指屈筋腱の「ばね指」~

先ほど「ばね指は母指に生じやすい」と解説した。

でもって、母指の屈筋腱は長母指屈筋腱一本のみで短母指屈筋は腱を持たないので、腱鞘炎が起こるのは長母指屈筋腱のみとなる。

炎症が慢性化すると腱と腱鞘が太くなったり、通過障害が起こる。

狭くなった腱鞘を太くなった腱が無理に通過するとき、ばねのように弾ける。

 

 

~2~5指の「ばね指」~

母指の屈筋腱が1本であるのに対し、2~5指の屈筋腱は深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2本で出来ている。

この時も親指と同じように炎症が慢性化するとばね現象を生じる。

PIP関節(俗にいう第2関節)に違和感を覚えこの訴えで来院することも多く、PIP関節炎との区別が必要である。

手の強張り、手のむくみも伴い、関節リウマチの症状に似ている。

 

 

ばね指(弾発指・スナッピングフィンガー)の治療

 

治療として、まずは誘因となった作業や運動を控える

 

また、以下などが処方されることもある。

  • 非ステロイド系炎症剤の処方
  • リハビリテーションとして温熱療法の処方

 

難治例ではステロイド腱鞘内注射を検討する場合がある。

 

※名称は違えど『腱鞘炎』という意味ではドゥケルバン症同じ病態なので、「基本的な治療の考え方」も似ている。

 

これらの保存的治療(手術しない方法)で改善の得られない症例は腱鞘切開術を検討する場合がある。

※特に長期間放置された症例や短期間に確実な完治を望んでいる場合は手術治療が実施される場合がある。

 

 

稀に、先天的に、乳幼児の母指に屈筋腱を発症することがある。

乳幼児の場合は成人と違って、指が拘縮(南部組織が固まって関節が動かなくなった状態)のために全く動かないので『剛直指』とも呼ばれている。

 

治療は曲がった指を徒手整復して(強制的に伸ばして)、数ヶ月間、装具療法(装具で母指を過伸展位にしておく治療)を行う。

※屈曲位でかたまるため、伸展位に整復させ数か月過伸展位のまま固定。

 

 

関連記事

 

⇒『フィンケルシュタインテストを解説(ドゥケルバン腱鞘炎)