この記事では『運動失調(協調運動障害)』に関する記事となる。

 

失調症に関する評価やリハビリに関してもザックリまとめているので参考にしてみてほしい。

 

運動失調とは(+協調運動障害との違い)

 

失調(lack  of order)』とは、「正常な機能の進行(順序や配列)に混乱をきたす症状」を指す。

 

運動失調(ataxia)』とは、「筋力低下がないにもかかわらず、協調運動障害をきたす症状」である。

 

運動失調により、意図した運動の方向性や動きの程度(加減)に変容をきたす。

また、随意的かつ反射的な筋収縮が損なわれ、姿勢の定位や安定性の維持といったバランス障害をきたす。

 

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協調運動と協調運動障害

 

先ほど「運動失調は、筋力低下が無いにもかかわらず、協調運動障害をきたす症状である」と記載した。

 

でもって『協調運動』とは以下の様に定義されている。

 

協調運動(coordinated motion)とは:

運動に関わる筋の空間的配列(spacing)収縮順位(時間的配列(timing)、筋活動の強さ(強弱(grading))の3要素が適切に制御されて行われる運動のこと。

協調運動は、筋が協同的にかつ調和して活動し、「合目的的かつ円滑に行われる運動」である。

 

筋の空間的配列:

例えば、手を伸ばしてテーブルの上に置いてある卵を持ち上げるときを思い出してほしい。手を伸ばす際に、何通りもある伸ばし方のなかから、一番効率のよい伸ばし方を選択すると思われる。つまり、「空間要因である運動要素に用いる筋の選択と組み合わせを調節している」といえる。

 

収縮順位(時間的配列):

例えば、卵をつかむ前に手は開き、卵に手が触れた瞬間に握る。これは時間の要因であり、筋出力のタイミングを調整している。

 

強さ(強弱):

例えば、卵を握り持ち上げるが際に、卵が割れない強さで握り持ち上げる。これは強さの要因であり筋の出力を調整している。

 

 

協調運動が行われるとき、運助は効率的で、消費されるエネルギー最が少なく、疲労を起こしにくい持久性が保たれたものとなる。

 

そして、このときの運動は「巧みさや細かさ」や「正確性」に優れ、無駄な動きのないものとなり、姿勢・運動・動作の安定性と安全性が保証される。

 

で、『協調運動障害(incoordination)』とは前述した「協調運動」が障害された状態ということになる。

 

なので厳密には、「運動失調=協調運動障害」ではなく、「協調運動障害の中に、運動失調が含まれる」ということになる。

 

協調運動障害を起こす例としては以下が挙げられる。

  • 脳卒中後片麻痺やその他の中枢神経障害
  • 末梢神経の病変による運動麻痺や不随意運動、筋緊張(トーヌス)の異常

・・・など。

 

※運動障害も広義の協調運動障害に相当する。

 

 

失調症の分類

 

運動の監視・統合システムのどこが損傷・病変を受けても失調が出現するが、基本的には以下の3型に分類される。

  • 小脳失調
  • 脊髄性失調
  • 前庭・迷路性失調

 

※ただし、これ以外にも大脳や末梢神経の損傷・病変でも失調は起こり得るので誤解なきよう・・・

 

 

病型 特徴 代表的な疾患
脊髄性失調症

深部感覚が上行する脊髄後索の病変によって起こる。

視覚による代償が可能なことが多い。

脊髄癆(せきずいろう)、フリードライヒ失調症、Friedreich ataxiaなど
小脳性失調症

小脳や脳幹の病変、損傷によって起こる。

距離測定障害、共同運動障害、振戦などが出現する。視覚による代償が効かないことが多い。

小脳や脳幹の出血や梗塞、小脳の変性疾患(オリーブ橋小脳萎縮症;OPCA、晩発性小脳皮質萎縮症;LCCAなど)、アルコール性の小脳萎縮症、腫瘍など
前庭・迷路性失調症 起立と歩行時の平衡障害が主体で、四肢の随意運動には障害がない、必ず眼振を伴う。視覚による代償が可能 前庭神経炎、メニエール病、聴神経腫瘍など

 

小脳性、脊髄性失調症、前庭迷路性の運動失調症がある。

一般的に脳血管障害による小脳性運動失調症は小脳の代償が大きく、よく回復すると考えられているが、進行性疾患である脊髄小脳変性症は徐々に進行する。

脊髄性運動失調症は深部感覚障害により運動失調が出現するが、視覚代償が大きく、フレンケル体操が有効である。

運動失調に対する理学療法には固有受容性神経筋促通法(PNF)、バランス改善を考慮した運動療法、重錘負荷、弾性包帯などがある。

~『理学療法学事典より引用~

 

 

補足:小脳の役割

 

「運動失調」と聞くと「小脳の障害」と結びつけて考えやすい。

 

でもって補足として、小脳の機能を念のため記載しておく。

 

小脳の機能は以下の通り。

 

協調性のある運動、すなわち運動に関与する多くの筋の調和ある共同作業により、目的とする運動を円滑かつ効率よく、無意識下で遂行させる機能。この機能により、正碓で円滑な運動が素早く、感覚フィードバックなしように可能となる(フィードフォワード制御)

 

役割を列挙すると以下な感じ。

 

また小脳の機能は、運動機能だけにとどまらず、「無意識下の世界を支配している」という観点から、認知機能、精神活動への関与も示唆されている。

 

 

失調症の「症状」と「評価」

 

失調症の症状は、四肢の運動調整障害、姿勢保持の困難、歩行バランスの低下など様々な形で出現する。

 

失調症状は、距離測定障害(dysmetria)、変換(反復)運動障害、共同運動障害、振戦、時間測定障害の要素から構成される。

 

障害の種類 障害の内容
距離測定障害 随意運動を目的の所で止めることが出来ない現象。目的まで達しないものを「測定過少」、いきすぎてしまうものを「測定過大」という。
変換(反復)運動障害 関節運動の切り替えが迅速かつ正確に出来なくなる
共同運動障害

運動の順序、組み合わせの調和が障害されたもの。これが消失することである動作が全く遂行できなくなったものを共同運動不能(asynergia)と呼ぶ。

振戦 運動軌道が揺れて一定しない状態を指す。目標に到達する前にそれが激しくなるものを企図振戦(きとしんせん)と呼ぶ。小脳失調に特徴的な症状である。
時間測定障害 動作開始時、あるいは停止時に運動が遅れる。

 

 

失調症と支持基底面・歩隔

 

 

健常者は比較的、歩隔を必要最小限にしか広げない一見不安定な動作を行う。

このように不安定状態であることは、重心の変動幅を小さくして効率的に運動することが要求され、このことで重力を有効に活用した動的姿勢へと円滑に移行できる。

 

以下は、歩隔を小さくすることによって、重心線を基底面中心お得に置き、動的姿勢へと移しやすくなる。

 

一方で運動失調を呈する場合、歩隔を十分にとることや杖、手すりなどの補装具を利用して支持基底面を広げることによって、安定を重要視した動作を行う。

 

以下は、歩隔を大きくすることによって、重心線を強い基底面中心の近くにおき、動作を安定的に行う。

 

関連記事

⇒『『跛行(はこう)』とは! 異常歩行(歩行障害)の全種類・原因を網羅する

 

 

運動失調の評価

 

前述した症状を踏まえた上での運動失調の評価としては以下などが挙げられる。

 

①測定異常の検査

・鼻指鼻試験

・指鼻試験

・足指手指試験

・踵膝試験験

・線引き試験

 

②変換運動障害の検査

・回内・回外試験

 

③共同運動障害の検査

 

④立位・歩行の平衡機能検査

 

運動失調における評価の詳細は以下で解説しているので、興味がある方はどうぞ。

⇒『運動失調(失調症)の評価法まとめ一覧

 

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小脳失調に対するリハビリのポイント

 

ここでは、失調症の中でも「小脳失調」にフォーカスして、リハビリ(理学療法・作業療法)のポイントを解説していく。

 

小脳性運動失調に対するリハビリの概要:

 

小脳性運動失調は、四肢などの協調運動障害と、姿勢を保つことが困難となる平衡障害といった側面からとらえることができる。

理学療法の実施においては、これらの特徴をよく理解したうえで適切な方法を選択する必要がある。

 

四肢の協調した運動には姿勢の安定性が必要であることから、協調運動障害と平衡障害は密接に関連しあっている。

すなわち、運動を正しく行う際には、運動の支点である中枢部の固定性と運動を行う末梢部の協調性の両機能を求められる。

 

協調した運動は複数の筋を空間的、時間的に制御することにより可能となる。

そのため協調運動障害は、運動にかかわる関節の数や運動の自由度に影響される。

理学療法は、姿勢や動作の安定性向上のためバランス機能の維持・改善を目的としたアプローチが主に行われる。

 

測定障害や共同運動不能などの失調症状を構成する特徴的な各要素の有無を調べるだけでなく、それらのうちで動作障害に強く影響を及ぼしている因子をとらえてアプローチ方法を検討する必要がある。

 

リハビリ(理学療法・作業療法)の内容は、「失調症状そのもの」の改善ばかりに目を奪われるのではなく、実生活における日常生活動作(ADL)能力の改善に向けたアプローチが必要である。

 

アプローチに際しては、成功体験を繰り返すことができるように内容を検討することもポイントと言える。

関連記事⇒『報酬系とリハビリテーション(=「強化学習」)

 

 

動作の難易度(単一・複合動作)について:

 

運動制御の重要なポイントに、運動自由度という考え方がある。

各関節に許されている運動自由度が大きいほど、運動制御の難易度は高くなる。

 

身体は多数の関節を介した分節構造をしている運動や動作は、これらの分節の運動が組み合わさって行われる。運動、動作をとらえる場合や運動課題を検討する際には、分節ごとの運動制御能力やその組み合わせに注意する。

 

運動・動作は.単分節で単一運動方向の場合、難易度としては低く、運動方向の変換を伴う場合や複数の分節運動からなる複合運動、複合動作ほど難易度は高くなる。

 

理学療法を実施するにあたっては、難易度の低い運動から、難易度の高い運動へ徐々に進めることが必要である。

 

 

回姿勢保持や動作の難易度における支持墓底面と重心位置の関係:

 

姿勢保持や動作の難易度は、支持基底面や重心の位置により左右される。

一般的に支持基底面が広く、重心が支持基底面の中心に位置し、高さが低いほど安定しており容易であるとされる。

 

小脳性運動失調では、重心の移動距離が大きくなり重心動揺が増加している場合が多い。また、重心位置が前後、左右へ偏位している場合が少なくない。

 

難易度が高くなるほど、過剰な努力によって姿勢保持を行っている場合があり、それがさらに異常姿勢を助長させる可能性がある。

 

支持基底面と重心位置の関係より動作の安定性(バランス)を段階づけて、レベルの低い段階から順に練習を進めることが基本である。

 

 

固有感覚情報の活用と視覚の代償:

 

①固有感覚情報の活用

筋緊張の低下している四肢や体幹の筋に弾性緊迫帯を装着したり、四肢に重錘を装着することで失調症状が軽減することが一般的に知られている。

これは固有感覚情報を増やすことによって運動(再)学習を促進する方法として用いられる場合がある。

 

②視覚の代償

小脳性運動失調に対する運動(再)学習においては、視覚の代償を用いる場合がある後述のフレンケル体操などは、運動学習に視覚の代償を用いた練習方法の1つである。

脊髄性運動失調ほどの著明な効果は期待できないが、運動(再)学習の環境・状況整備として重要である。

眼振や眼球運動障害などを伴う場合や病変部位によっては、視覚代償の適用が困難であるので注意する。

 

③基本動作およびADL訓練

小脳性運動失調では、動作を構成するおのおのの運動を個別に練習しても動作の改善に結びつかないことがある。動作を櫛成する運動を個別に練習するだけでなく、一連の運動を組み合わせた動作として練習を実施することも必要である。

基本動作や日常生活動作の練習を実施するにあたっては、動作の難易度などに留意して姿勢保持練習や動作練習を段階的に進めていく。

動作は実生活での活動性獲得が最終的な目標となるが.そのためには機能性・安定性、安全性などが獲得される必要がある。動作獲得に向けての理学療法の展開においては、これらの改善が目標となる。

 

④運動学習

中枢神経である小脳が原因となる障害に対しては、運動(再)学習といった観点より運動課題を設定しながら理学療法を進めることが重要である。

現在では、主に視覚代償を利用する方法や固有感覚情報の増大を利用する方法などを取り入れながら、各筋収縮の協調性を高めて動作の改善をはかることが一般的である。

小脳は運動学習にかかわる重要な部分であり、現在、その運動学習のメカニズムが解明されつつあることから、常にこれらの情報を吟味し、治療に取り入れていく必要がある。

 

 

失調症に対するリハビリの実際

 

失調症に対するリハビリの一例として以下について記載していく。

  • 重錘負荷・弾性緊迫帯などの活用
  • PNF

 

また、後述するリンク先の『フレンケル体操』も一読してもらうと、失調症に対するリハビリへの理解が深まると思う。

 

 

重錘負荷・弾性緊迫帯などの活用

 

臨床では、運動(再)学習を進め、運動・動作の改善をはかることを目的に重錘負荷、弾性緊迫帯を利用することがある。

 

重錘負荷(loading weight):

上肢の場合は手関節付近に200~400g、下肢の場合は足関節付近に300~600g程度のおもりを装着するとされている。また、下肢に関しては靴におもりを付加する方法もある。

重錘の負荷量や負荷をかける場所など、細かなことは実際に患者に試して決定する。

重心の偏位を認める場合や、企図振戦などが著明な場合、麻痺側に重量負荷を行うことで効果を得ることがある。

小脳性失調症の上肢・下肢に重錘を負荷することで、筋紡錘からのIa発射が活発になり運動制御が行いやすくなる。長期間のアプローチを実施することにより、運動の再学習を促し協調性の改善が図られる。企図振戦などに対する場合は、重錘を重めに設定して即時的な効果をねらう。

基本的には重錘負荷は身体に直接装着するが、歩行器・杖・靴底などに付与することで歩行の安定性が増加することも報告されている。

 

 

 

弾性緊迫帯(弾性包帯 elastic bandage):

体幹や四肢近位部に装着する場合が多く、目的とする筋の筋腹から関節にかかるように装着していく(装着する部位は四肢近位関節部、とくに筋腹上が一般的)。

その他、装着のしかたにより物理的な関節運動の制動、補助が可能である。

圧迫には弾性包帯などを用いる。

装着に際しては、緊縛する強さは適度な圧迫感が得られる程度で十分であり、循環障害を起こすことのないように注意し、動作の改善を確認しながら適切な圧迫を行う。

※結局のこところ、弾性緊縛帯の締める強さや場所など、細かなことは実際に患者に試して決定することのなる。

弾性緊迫帯や重錘を装着しての運動は筋紡錘からの求心性情報量(Ia発射)を増加させ、フィードバックシステムを強化することにより運動の改善がはかられると解釈されている。

 

ポイント:重錘負荷や弾性緊迫帯は装着を外すと効果が持続しないことが問題とされるが、即時的な効果により成功体験を得ることができる場合があることや固有受容感覚の情報入力に優れているほうが有利であるといったポジティブな要素は着目すべき点と言える。

 

なぜ弾性緊迫や重錘バンドを利用するのか?

 

小脳は運動の計画や学習に関与している。なので小脳性運動失調患者では運動の計画や学習が上手にできない状態にある。重錘や弾性包帯により、筋紡錘から小脳への求心性入力を増加させる(感覚情報のフィードバック信号を増やす)ことにより小脳での処理が行いやすくなる。

※これにより運動の修正の促しや学習を促進させている。

また、重荷の負荷により慣性力が増加することによる制動作用、動筋のモーメント増加により拮抗筋の緊張が高まることによる運動制御の向上、注意力が増すことなどが考えられる。

 

 

PNF(固有受容性神経筋促通法)

 

固有受容性神経筋促通法(PNF)の中でも、失調症のリハビリとしては「リズミックスタビライゼーション(やスタビライジングリバーサル)やスローリバーサルといった主義がフォーカスされやすい。

いずれにしても、固有感覚入力を増強しながら、反復運動障害や共同運動障害などの改善を図るのがポイントとなる。

 

 

PNF(固有受容性神経筋促通法)の活用:

固有受容性神経筋促通法(PNF)は固有受容器を刺激することによって、神経筋の活動を促進しようとするものである。

その手技のうち、スローリバーサル、リズミツクスタビリゼーションなどが適応となる。これらの手技は持続的な効果に乏しいなどの問題も指摘されている手技の詳細については専門普を参照されたい。

 

スローリバーサル:

拮抗筋の随意収縮の後に主動筋の興奮性が増加することを利用し、促通パターンをゆっくりと往復させる。具体的には、例えばPNFパターンによる運動方向に抵抗を加えながら、等張性収縮を用いて拮抗する運動をゆっくり行う。運動最終域に達したら、つぎに逆方向へ運動を行わせる。運動は2~3秒間で一方向を行い、数回実施する。で、スローリバーサルの最中に等尺性収縮を加えるのを「スローリバーサルホールド」と呼ぶ(関連記事⇒『PNFテクニック(拮抗筋テクニック)を解説!』)

 

リズミツクスタビリゼーシヨン:

等尺性収縮を拮抗する方向に交互に抵抗を加える保持させる。

上肢・下肢だけではなく体幹を固定する筋同時収縮によって安定性を向上させる。患者に関節を動かさずに姿勢を保つように指示しながら、セラピストは様々な方向(対角方向)への(患者が耐えられる程度の)を加える。2~3秒間かけてジンワリとした抵抗を加えればリズミックスビライゼーション(フィードバック)となり、素早く抵抗を加えながら急速な抵抗の変換を繰り返すとスタビライジングリバーサル(フィードフォワード)になる。

 

以下は、座位によるリズミックスタビライゼーション・スタビライジングリバーサルの一例になる。

 

また、以下の動画の様に(端座位から姿勢の難易度を1つ下げ)「背臥位下肢屈曲位」であったり「四つ這い」でBOSを広くし、体幹の安定性を高める練習(外乱を加える)なども採用されるケースがある。

 

※セラセラピストは対角方向に交互に律動的な外乱を加え、患者はそれに抗して、一定の肢位を保持する。

 

 

抵抗のかけ方は、インナーマッスル(コアマッスル)の段階的トレーニング』でも詳しく解説しているので合わせて観覧してみてほしい。また、関連記事として以下も合わせて観覧すると理解が深まるかもしれない。

⇒『フィードバックとフィードフォワード(+違い)

⇒『PNFテクニック(拮抗筋テクニック)を解説!

 

 

その他、立位姿勢の安定のために、立位で患者の両側の腸骨量に手を置きリズミカルに下方に圧を加えるジョイント・アプロキシメーション(関節圧縮)の手法が有効な場合もある(腸骨稜ではなく、肩甲帯に尾側へ圧迫を加えることが有効な事も)。

※関節の圧縮は、関節内の受容器を刺激することで、筋収縮力を高め関節の安定性を増大させる効果が期待される。

この手法により一過性のα運動ニューロンの興奮性が増加することが確認されており、前述した立位保持練習のみならず、歩行動作の直前に行うこと効果的な場合もある(実施することでフラフラせずに歩行可能となるケースもある)。

 

 

余談:PNFにおける「圧縮」と「牽引」

 

PNFでは、関節の圧縮や牽引は関節の固有受容器を刺激し、筋活動を促通させると考える。

関節の圧縮は安定性に、関節の牽引は関節を滑らかにする。

例えば、何か重いものを持った時、下肢には荷重がかかり関節に圧縮がかかる。上肢には重りにより関節に牽引がかかる。

下肢は体重を支えるために安定させなければならない。

PNFの実際の治療では、様々なところでこの牽引と圧縮を利用する。

上肢の安定性を高めるために四つ這い位にして上肢に圧縮をかけたり、歩行時の立脚相に骨盤い圧縮を加えることにより下肢の安定性を高めるために使用される。

 

関連記事⇒『(サイト)PNFにおける「促通要素」をザックリ解説するよ!

 

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失調症のリハビリ(理学療法・作業療法)として有名な『フレンケル体操』

 

失調症のリハビリ(理学療法・作業療法)として有名なものに『フレンケル体操』がある。

 

フレンケル体操に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方は参考にしてみてほしい。

 

⇒『フレンケル体操ってなんだ? | 失調症のリハビリを考える

 

 

その他のリハビリ

 

先ほどは、失調症に対する特殊な考えを示したが、一般的なリハビリ(関節可動域・筋力増強・全身運動)に関しても、重錘負荷や弾性緊迫帯などを補助的に用いるなどしながら、支持基底面を広くとることや単純な動作から始めるなどの工夫をしながら進めていったりする。

 

でもって、運動療法におけるポイントは以下などが挙げられる。

 

  • 動作を構成する運動の学習においては、力源となる求心性収縮、運動制御や安定性に深くかかわる遠心性収縮、等尺性収縮などが再学習できるように運動課題を設定する。

 

  • 運動、動作が正碓に、安定して行えるように、中枢部の固定性や末梢部の協調性を意識して運動課題を設定する。

 

  • 運動の速度やリズムは、運動制御が容易なマイペースか速い状態から始め、徐々にゆっくりとした状態へ学習を進めるとよい。

 

  • 過剰な努力で異常姿勢を助長しないように、安全・容易で安心感の得られる姿勢や動作から段階的に進めることが必要である。

 

  • 各動作の一連の流れをとらえて、安定性などに問題が生じた部分については繰り返したり環境設定を検討することが重要である。

 

 

筋力増強

 

筋力増強には、「重り」や「自重」を利用した方法、またはPNFの手技などを用いる。

運動負荷量などの条件は、筋力増強のための基本的原則に準じる。

実施に際しては、安定性を確保し、問題となる運動や動作の遂行において活かすことのできるような筋収縮様式を取り入れて進めることが重要である。

 

※協調性改善目的の運動は(「低負荷」「高頻度」の連動)が主体となるが、「筋力増強」「持久性・耐久力向上」は、運動の協調性を構成する基本であり、必要に応じて適宜実施する。

 

 

関節可動域の改善

 

関節可動域制限に対しては通常の練習に準じるが、自動運動や自己他動運動を用いる場合に正確な運動が行えるか確認しながら進めることが必要である。

異常姿勢や異常運動パターンにより関節可動域が過剰となることがあるこの場合は装具などにより制動するなどの検討が必要となる。

 

 

全身持久力改善

 

全身持久力運動の負荷量は通常の練習に準じるが、連動回数が多いため、運動の持続が可能で安全な方法を選択する必要がある。

自転車エルゴメーターは歩行が不可能な場合でも使用可能で、安定性も得られることから利用しやすい。

 

※協調性改善目的の運動は(「低負荷」「高頻度」の運動)が主体となるが、「筋力増強」「持久性・耐久力向上」は、運動の協調性を構成する基本であり、必要に応じて適宜実施する。

 

ADL場面への応用

 

小脳性運動失調は練習効果の転移が少ない場合が多いことから、障害物の有無といった周囲の状態や路面などの状態・履物の有無など、実際のADL場面を想定して練習することや環境設定を行うことが必要である。

手すりなどの利用において体幹失調を認める場合には、手掌で支持するよりも前腕や腋窩など高い位置で行うほうが動揺を軽減できる場合が多い。

通常、バリアフリー環境では空間を広くとることが一般的であるが、バランス障害の顕著な小脳性運動失調の症例には、逆に広い空間が不利因子になることがある。

環境設定などでは、手すりなどの設置だけでなく空間の設定も検討する必要がある。

 

 

補装具の活用・工夫

 

小脳性運動失調に用いられる補装具は、主に転倒による外傷予防・運動制御を容易にするための運動自由度の制限固有受容感覚の活用や支持基底面の拡大などを目的とする。

 

頭部保護帽 転倒時の頭部保護
スプリント 運動自由度の制限(運動制御の容易化)
膝装具 運動自由度の制限(運動制御の容易化)
靴型装具

重り負荷による固有受容情報の増大

内外側フレアやウェッジなどによる立位安定性の改善

重錘バンド 重り負荷による固有受容情報の増大
弾性包帯 固有受容情報の増大(弾性緊迫帯)
サポーター 固有受容情報の増大(弾性緊迫帯と同じ)
歩行器・杖 立位・歩行時の安定性改善
車椅子 歩行困難時の移動確保

 

歩行器などの補助具も利用されることが多い。

この際に重心動揺の改善をはかり、安定性を保つために歩行器におもり装着を行ったり、支持面を高くして支持をしやすくするなどの工夫を行う。

 

関連記事

 

⇒『運動失調(失調症)の評価法まとめ一覧

 

⇒『フレンケル体操ってなんだ? | 失調症のリハビリを考える

 

⇒『脊髄小脳変性症とは? 症状・分類・評価法・予後なども解説!