この記事では『痙性斜頸(けいせいしゃけい)』に関して解説していく。
痙性斜頸とは
痙性斜頸とは、頭頚部の筋緊張異常により頭位に異常を生じる病態を指す。
※局所性ジストニーに属する。
なぜ痙性斜頸が起こるのか、その理由は明確にはなっていないが、「大脳の運動・姿勢プログラムの異常」との意見が多い。
斜頸姿勢は、以下が組み合わさって出現する。
・頸部の回旋・側屈・前屈・後屈
・肩甲帯の挙上
・脊柱の側彎
頸性斜頸の機能解剖
頸性斜頸における異常頭位とそれに関与する筋群は以下の通り。
前屈 | 側屈 | 後屈 | 同側回旋 | 対側回旋 | |
---|---|---|---|---|---|
胸鎖乳突筋 | ○ | ○ | ○ | ||
僧帽筋 | ○ | ||||
広頸筋 | ○ | ||||
頭板状筋 | ○ | ○ | |||
斜角筋(前中後) | ○ | ○ |
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頸性斜頸の症状
頸性斜頸の症状としては以下などが挙げられる。
・頭位の異状
・頸振り
・頸部痛
・異常姿勢
異常姿勢や運動は一定しており、日によって頭位が変わることは無い。
症状は精神的緊張や歩行時に増悪することが多い。
また手を軽く顔面に沿えるだけっで症状が一時的に改善する(感覚トリックと呼ばれる)ことがある。
日常生活の問題としては、外観の異状による心理的問題、斜頸のわずらわしさから作業に集中できない、自転車運転の障害などがある。
頸性斜頸の治療
頸性斜頸の治療として以下を記載していく。
・日常生活指導
・リハビリ(理学療法)
・薬物療法(経口)
・神経ブロック
生活指導
頸性斜頸に対する日常生活指導としては以下などが挙げられる。
- 睡眠を十分にとり、精神的ストレスを避ける。
- 斜頸位を持続反復するような職場環境を避ける。
- 重いものをもつことや、激しいスポーツを避ける。
- 知覚トリックを積極的に利用する。
リハビリ(理学療法)
頸性斜頸に対する理学療法としては以下などが挙げられる。
- 関節可動域訓練訓練
- 短縮筋のストレッチング(前述した一覧表も参照)
- 鏡をみながらの自己矯正
- 筋電図バイオフィードバック療法
・・・・など。
※筋電図バイオフィードバック療法では、過緊張筋に電極を貼付し、筋活動の抑制を試みる。
薬物療法(経口)
頸性斜頸に対する薬物療法としては以下などが用いられる。
・・・など。
神経ブロック
過緊張の筋に、筋内神経の活動やシナプス伝達を遮断する薬物を注射する。
注射する薬物はボツリヌス毒素(ボトックス)が用いられる。
ボツリヌス毒素はアセチルコリン作動性神経終末に取り込まれて、アセチルコリンの放出を阻害する作用があり、ボツリヌス療法(ボツリヌス注射)に関しては以下の記事も参照してみてほしい。