この記事は脛骨の高原骨折(プラトー骨折・顆部骨折)について解説していく。
骨折後のリハビリ(理学療法)に関するクリニカルパスも掲載しているので、リハビリの参考にしてみてほしい。
※ただし、あくまで参考・目安であり、必ず医師の指示に従うこと
脛骨高原骨折とは?
脛骨高原骨折とは、脛骨の近位端における骨折を指す。
※大腿骨の内顆また外顆あるいは両者の骨折により、膝関節内に骨折線が及ぶものを指す。
別名として『プラトー骨折』『脛骨顆骨折』と呼ばれることもあるが、これらは同義である。
受傷機転は高速走行中の交通事故によるものが最も多く、次いで高所から墜落して脛骨を介して外力が大腿骨顆部に及ぶ場合がある。
症状として、関節内出血による腫脹があり、また膝関節運動が不能になる。
また、膝窩部の動脈や神経損傷を合併することもある。
高原骨折は関節軟骨の損傷や靭帯損傷、半月板損傷などの合併症が多く、その後の機能的予後に影響する。
血管損傷や神経麻痺を随伴する場合にも、治療の主軸を判断し合併症へ配慮することが重要である。
高原骨折の分類
「高原骨折の分類」はいくつかあるが、ここでは「Schatzkerの分類」を記載しておく。
高原骨折はSchatzkerによってI~Ⅵ型に分類され、外科的治療や予後も異なる。
- typeⅠ(外側顆分離骨折)
- typeⅡ(外側顆分離陥没骨折)
- typeⅢ(外側顆陥没骨折)
- typeⅣ(内側顆骨折)
- typeⅤ(両側顆骨折)
- typeⅥ(両側顆骨折に骨幹端部骨折を合併)
リハビリ(理学療法)
標準的な骨癒合期間としては、「4~6週で仮骨が生じ、骨折部が安定し始める完全骨癒合まで10~12週を要する」と言われている。
でもって標準的なリハビリテーション期間は14~20週程度。
リハビリ(理学療法)の治療ゴール
リハビリ(理学療法)の治療ゴールは以下の通り。
関節可動域:
膝関節の正常な関節可動域を猿得することを目指す。
また、足関節および股関節の可動域を維持する。
筋力:
膝関節伸筋である大腿四頭筋の筋力回復を図る。
ハムストリングス(半腱様筋、半膜様筋・大腿二頭筋)の筋力も膝関節屈曲および股関節伸展補助に重要である。縫工筋・簿筋および腓腹筋も膝関節における二関節筋であり、機能回復の対象となる。
機能的ゴール:
膝関節の十分な可動域を獲得し、立脚期での膝関節安定性の回復を図る。
脛骨骨幹部骨折のリハビリ(理学療法)におけるクリニカルパス
脛骨骨幹部骨折のリハビリ(理学療法)を実施するにあたって、以下のクリニカルパスは一つの目安になる。
※あくまでも一例であり、主治医の指示に従うこと
~『理学療法ハンドブック改訂第4版 4巻セット』より引用~
~1W | 2~4W | 6~10W | 12~16W | |
---|---|---|---|---|
ROM運動 |
術後早期より開始。 90°を目標とする膝CPM。 |
痛みに応じて全可動域獲得を目指す。 | ---------- | ---------- |
筋力トレーニング | 膝関節周囲筋等尺性運動 | 膝関節周囲筋等尺性運動 | 抵抗運動・荷重下でのトレーニング開始 | ----------- |
荷重 | ---------- | ---------- | 部分荷重開始 | 全荷重 |
留意点 | 浮腫・疼痛への対応 | 運動後のアイスパックを検討 | 骨折部の安定性によって抵抗運動、荷重開始は変更される。 | 左記(6~10Wと)と同様 |
高原骨折は短期間に膝関節拘縮が進行するため、早期から関節可動域運動を行い軟部組織の癒着軽減を図る。
術後~1週間:
術後1週間で90°が理想的とされる。
まずは自重を利用した屈曲運動やCPMを行う。
運動時は過度の内外反や回旋が生じないように留意する。
運動痛には薬物療法や寒冷療法も併用する。
筋力運動は膝伸展位での大腿四頭筋の等尺性運動(パテラセッティング)を行う。
2週目以降:
2週目以降はROMの拡大を図る。低周波通電やEMGバイオフィードバック機器も有用である。ROM運動中の防御収縮に対しては筋弛緩を再教育する。車椅子移動や松葉杖歩行練習も実施し、転倒リスクに備える。筋力トレーニングは免荷期、荷重期等、各期間に適した筋力トレーニングを選択する。
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ギプス固定による保存療法では比較的長い固定期間(6~10週)を要し、全荷重は12~16週以降となる。荷重時期には二次性の変形を招かないように留意する。
※高原骨折では、膝関節拘縮だけでなく、膝関節不安定性、内外反変形も生じやすい。
オススメ書籍
骨折のリハビリ(理学療法)をするにあたって、以下の書籍を一通りそろえておくと、非常に心強いと思う。
是非参考にしてみてほしい。
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