この記事では、リハビリ(理学療法)として運動療法を展開していくためのヒントとなり得る「動作の発達段階から考える治療訓練の4レベル」を紹介する。
動作の発達段階から考える治療訓練の4レベル
この考えは、運動における発達的側面を「重心の位置」と「重心移動」という力学的現象で捉えて、治療・訓練を進めていく考えとなる。
レベル1が一番難易度が低く、レベル4が一番難易度が高いという事になり、「クライアントが達成可能な難易度がどのレベルか」を評価するのに役立つし、段階的なリハビリ(理学療法)トレーニングを進めていきやすい。
レベル1:安定した姿勢で四肢・体幹を動かすことができるレベル
重心が低く支持基底面は広いので姿勢としては安定した段階と言える。
例えば、背臥位というのは「重心が低く、支持基底面が広い」ので、この状態で四肢を動かせるかどうか、あるいは動かせるようなリハビリ(理学療法)を実施していく。
関連記事⇒『支持基底面と重心線と重心』
筋の収縮様式は『求心性収縮』であうる。
レベル2:不安定な姿勢を維持することができるレベル
姿勢を一定に正しく維持できる静止姿勢保持の段階と言える。
レベル2は以下のイラストの様に、重心Gが静止しており(厳密には多少の同様は常にしているが)、言い換えれば「静的姿勢を保持し続けている状態」を指す。
例えば、立位保持、タンデム姿位、片脚立位などが可能なのは、「レベル2:不安定な姿勢を維持することが出来るレベル」を有しているということになる。
関連記事⇒『タンデム肢位をバランス練習に活用しよう』
このレベルでは立ち直り反応が正常なことが重要である。
このレベルの訓練としては、例えばリズミックスタビリゼーションが該当する。
筋の収縮様式は『静止性収縮』である。
レベル3:不安定な姿勢を動揺することができるレベル
姿勢を維持しながら身体部分を動揺できる段階と言える。
レベル3は以下のイラストの様に、重心Gを支持基底面内(の安定性限界内)で、バランスを崩すことなく移動することが出来る状態を指す。
例えば、立位のまま動揺してみたり、ファンクショナルリーチの様に「立位で手を遠くへ伸ばす」という行為は、レベル3に該当する。
このレベルでは、立ち直り反応、バランス反応(平衡反応を含む)が正常なことが重要である。
このレベルの訓練としては、前述したリーチング動作練習でも良いし、バランスリーチレッグやバランスボール上でのトレーニング(静的ではなく、動的なトレーニング)が該当する(つまり安定性限界ギリギリまで重心を動かしながらもバランスを崩さないようなトレーニングが該当する)。
また、(少し難しいかもしれないが)スタビライジングリバーサルもレベル3に該当する。
関連記事⇒『PNFの拮抗筋テクニックを解説』
筋の収縮様式は『遠心性収縮』である。
レベル4:姿勢を移動することができるレベル
運動により姿勢をスムーズに移動できる段階と言える。
レベル4は以下のイラストの様に、重心Gが支持基底面の外へ出て、新たな基底面を作り出すことの出来る状態を指す。
このレベルではバランス反応(平衡反応を含む)が正常なことが重要である。
つまり、重心を支持基底面の中から外へだし転倒する前に新たな支持基底面を作り移動する能力である。
例えば歩行はレベル4に該当する。
あるいは、突き飛ばされた際のステッピング反応などもレベル4に該当する。
筋の収縮様式は『求心性・静止性・遠心性収縮』のいずれもが含まれる。
声筋の収縮様式は以下で詳細を記載しているので合わせて観覧してみてほしい。
⇒『筋の収縮様式(求心性/遠心性/静止性/等尺性/等張性収縮)の違い』
動作の発達段階から考える治療訓練の4レベルのまとめ
レベル |
レベル1 |
レベル2 |
レベル3 |
レベル4 |
重心と支持基底面の関係からみた力学的現象 |
重心は低く、広い支持基底面で安定している。 重心の移動は少ない。 |
高い重心は狭い支持基底面の中心に安定している。 |
高い重心は狭い支持基底面の中で移動している。 |
高い重心は狭い支持基底面の中から外へ出て、新たな支持基底面を形成する。 |
例 |
背臥位で上下肢を動かす |
立位を保持する |
立位を動揺する |
歩行 |
この記事では、ステッピング反応や平衡反応という用語が登場したが、それらに関しては以下の記事でまとめている。
これらが整理できていたほうが、この記事の理解も深まると思うのでぜひ参照してもらいたい。
立ち直り反応とステッピング反応(+違い)
段階的トレーニング関連記事
以下の記事では、インナーマッスルの段階的トレーニングに関して記載している。
こちらは、具体的なトレーニングの内容にも言及しているので、こちらも参考にしていただきたい。
インナーマッスル(コアマッスル)の段階的トレーニングを解説!
この記事は、バランス能力を静的バランス・動的バランスとして解釈した場合に理解が深まる。
以下の記事では、そんな静的・動的バランスを詳しく解説しているので是非参考にしてもらいたい。
静的バランス・動的バラス(+違い)
あるいは、転倒予防のための評価については以下を参照。
※これらの評価は、バランス練習として応用可能な要素も多く含んでいる。
バランス評価テストのカットオフ値まとめ
また、PNFは、ここで記載した療訓練の4レベルの発達的側面を評価しながら臨床を展開していくことが基本となる。
そんなPNFに関しては以下で詳しく解説している。