この記事ではアキレス腱炎(アキレス腱関節包炎)に関して原因・症状・治療法について解説していく。

 

ちなみにアキレス腱とは『下腿三頭筋(ヒラメ筋・腓腹筋)』が合体して腱になったもので踵骨後方突起に付着している。

 

※アキレス腱は人体の中で最大の腱である。

 

下腿三頭筋に関しては記事最後にリンクを貼っているので、アキレス腱がピンとこない方は合わせて観覧してみてほしい。

 

アキレス腱炎の原因

 

一括りにに「アキレス腱炎」と呼ばれている疾患ではあるが、以下の様に炎症を起こしている部位が若干異なっていたりする。

 

アキレス腱炎

(狭義の)アキレス腱炎とは、アキレス腱自体が微細な部分断裂によって炎症を起こした状態を言う。

 

アキレス腱周囲炎

アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱周囲の結合組織(パラテノン:paratenon:腱鞘間の滑液組織)が炎症を起こした状態を言う。

 

アキレス腱関節包炎アキレス腱付着部炎):

アキレス腱関節包炎(アキレス腱付着部炎)とは、アキレス腱付着部周辺にある滑液包(踵骨包)が炎症を起こした状態をいう。

 

アキレス腱は一般的な腱と違い腱鞘に包まれていないが、腱の表面にパラテノンとよばれる疎性線維性結合組織の膜が覆っているといわれる。

パラテノンが滑液鞘であるのか、踵骨包などの滑液包であるのか、それとは別の組織であるのか(どちらかの複合物か)は、はっきりとしていない(文献によっても解釈が異なる)。

 

浅踵骨包は皮膚と踵骨腱の間にあり、深(後)踵骨包は腱と踵骨の間にあり、腱と骨の間の動きを滑らかにしている。

 

上記に示した3つの炎症に関して、これらの病態メカニズムは多少の違いがあるものの、症状や治療についてはほぼ同様である。

 

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アキレス腱炎の原因・症状

 

アキレス腱炎症の原因としては以下などが言われている。

 

  • スポーツ活動や長時間の作業による慢性的なアキレス腱への刺激(要は使い過ぎ)
  • 間違った靴選び(靴が自身に合っていないことでアキレス腱に負担がかかる)
  • 腱の変性、下腿三頭筋の筋力及び柔軟性の低下
  • 足部の回内足変形

・・・・・など。

 

 

アキレス腱炎の症状

 

アキレス腱炎の症状としては以下が挙げられる。

  • アキレス腱周囲の痛み
  • アキレス腱周囲の腫れ

 

痛みのために足首の運動障害や歩行障害も呈する場合もある。

 

診察ではアキレス腱の肥厚や圧痛、足関節の運動制限などを認める。

 

レントゲン検査では特徴的な異常所見はない。

※時に、アキレス腱の肥厚(CR 軟部組織撮影)やアキレス腱付着部の骨棘(骨の棘)を認めることもある。

 

また、同様な症状を呈する疾患として『アキレス腱石灰化症』があるが、レントゲン検査にてアキレス腱周囲に石灰化像が認められることより診断は容易である。

 

 

アキレス腱炎の治療

 

アキレス腱炎の治療としては以下が挙げられる。

 

  • 保存的治療①:病期に応じたマネージメント(リハビリ・理学療法)
  • 保存的療法②:薬物療法
  • 手術療法

 

 

アキレス腱炎に対する保存的治療① 病期に応じたリハビリ(理学療法)

 

アキレス腱炎の治療は保存的治療(手術しない方法)が原則となる。

 

具体的には、誘因となったスポーツ活動を一時的治療は中止した上で、以下を試みる。

  • 病期に応じたマネージメント(リハビリ・理学療法)
  • 薬物療法

 

 

でもって(アキレス腱に限ったことではないが)リハビリとしては「組織の状態に適したマネージメント」が必要となり以下の表は理解しておく必要がある(「マッケンジー法パートC公式テキスト」より引用)。

 

組織の状態 痛みのメカニズム マネージメント
正常

異常な負荷が加わった時のみ痛みが誘発される

再教育

炎症

(急性期)

主に化学的な因子による痛み 安静

修復

(亜急性期)

・化学的因子とメカニカル因子が混ざり合った痛み。

・前者から後者への移行期

機能回復エクササイズ

異常

(拘縮・癒着)

メカニカルな痛み 組織のリモデリング

異常

(derangement)

メカニカルな痛み 整復

遅延化した

過敏状態

(慢性期)

末梢神経性・中枢神経性の感覚異常状態

リコンディショニング

脱感作

※基本的に炎症(急性期)は短期間(リウマチなどの炎症疾患は除く)

 

 

一般的なマネージメントの順序は以下の通り。

 

  1. 受傷・炎症(急性期):

    ・損傷を悪化させないため患部の保護

    ・炎症浸出液を過剰に出さないための措置

    ・腫脹を押さえる

    ※RISEの処置がなされる場合も

  2. 修復(亜急性期):

    ・マイルドで無理のないストレッチや負荷(刺激の強さは伸張時痛が誘発されても、伸張を解除した後に痛みが残存しない程度である必要がある)

    ・徐々に通常の強度・ストレッチ強度にあげる

    関連記事⇒『下腿三頭筋とは?トレーニング+ストレッチも解説

  3. リモデリング:

    ・拘縮の予防・組織の強度と柔軟性を確保するため、通常の強度での負荷とストレッチ

    ・リモデリングにストレッチなどの刺激が重要な点は(靭帯と腱では多少考えは異なるとは思うが)『捻挫と靭帯損傷(+違い) | 修復過程も紹介するよ』の「靭帯損傷の修復過程(リモデリング期)」も参照にしてみてほしい

 

 

また、修復期以降であれば、ホットパック超音波などの温熱療法などの物理療法を併用することもあり、温熱療法に関しては以下を参照。

⇒『温熱療法の作用まとめ!「温熱の良し悪し」を把握して臨床に活かそう♪

 

 

再発を繰り返す症例ではアキレス腱にかかる負担を軽減する目的にて装具療法(足底板)の装着を勧める場合がある。

※足部回内により、足部へ負荷が加わるたびにヒラメ筋腱が伸張刺激に晒されて炎症が生じてしまう場合など。

 

アキレス腱の線維の走行は長軸に平行ではなく、浅層の腓腹筋からの腱は下行するにつれて外側へと走行し、深層のヒラメ筋の腱は内側へ下行するようになり、90°近く内旋する。この腱の線維の配列は衝撃や反動を吸収するのに重要な働きをしていると考えられる。

 

~『運動器疾患の病態と理学療法』より引用~

 

また、荷重下での足部の安定化を図る目的で足部内在筋を鍛える練習をしても良いかもしれない

 

具体的なリハビリ(理学療法)としては以下などが考えられる。

 

 

 

 

アキレス腱炎に対する保存的治療② 薬物療法

 

薬物療法としては以下などが挙げられる。

 

 

 

アキレス腱炎に対する手術療法

 

アキレス腱炎の治療は保存的治療が原則だと前述したが、以下の症例では手術療法が適応となる場合もある。

 

  • 保存的治療にて改善されない症例
  • 再発を繰り返す症例
  • スポーツ活動への早期復帰を希望する症例の一部

 

 

手術はアキレス腱周囲の瘢痕化した組織を摘出し、癒着したアキレス腱を剝離する。

 

 

関連記事

 

ここまでの内容でリンクを貼っている記事もあるが、改めて関連記事として紹介しておく。

 

⇒『捻挫と靭帯損傷(+違い)知ってる? 解説するよ

 

⇒『下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)のトレーニング+ストレッチ

 

⇒『アキレス腱断裂の原因・症状・治療法を解説